29日に検定結果が公表された高校教科書では、政府が昨年4月、使用を不適切とする閣議決定をした「従軍慰安婦」を1社が掲載。先の大戦での朝鮮半島から日本本土への労働者動員でも、政府見解に反する「強制連行」の記述が残った。歴史認識をめぐる当該国との応酬が続く中、国益への悪影響が懸念される。
今回、「従軍慰安婦」と表記して申請したのは東京書籍の「政治・経済」。平成5年の河野洋平官房長官談話を引用する形で記述があった。昨年4月の別の閣議決定では、朝鮮半島からの労働者動員を「強制連行」とすることが不適切とされたが、「日本史探究」で第一学習社のみが記述を残した。両社は申請段階で政府見解に触れていない。
東京書籍は、閣議決定が申請直前だったことや閣議決定を踏まえた文科省の教科書会社への昨年5月の説明会が申請後だったために編集が間に合わず「閣議決定を生かすことはできなかった」と説明。第一学習社も「閣議決定が申請直前で、申請本の作成はすでに終えていた」としている。