露、キエフ周辺で軍事活動を大幅削減表明 停戦交渉再開 ウクライナ「中立化」提案

ロシア軍の砲撃で破壊された住宅で、持ち物を探す男性=28日、キエフ(ゲッティ=共同)
ロシア軍の砲撃で破壊された住宅で、持ち物を探す男性=28日、キエフ(ゲッティ=共同)

ロシアとウクライナの代表団は29日、トルコ最大都市イスタンブールで停戦交渉を再開した。ウクライナはロシアの要求に応じる形で北大西洋条約機構(NATO)加盟を断念する「中立化」を提案した。一方、ロシア国防省は29日、信頼醸成措置の一環として、ウクライナの首都キエフ周辺と北方チェルニヒウ方面での軍事活動を大幅に削減すると発表した。

停戦交渉は2月28日以降、オンライン形式も含め断続的に行われてきた。対面式は4回目。今回の交渉結果が停戦への足がかりになるかが注視される。

ウクライナは同国の安全を保証する関係国の枠組みができた後に「中立化」を受け入れるとした。「非核保有国」の地位受け入れのほか、外国軍の基地を設置しない方針も示し、ロシアとの合意について国民投票を行う必要性を強調した。

ロシアには、ウクライナの欧州連合(EU)加盟に反対しないことを求めた。ロシアが一方的に併合した南部クリミア半島の地位について15年間の協議期間を設けることも提案した。

両国の首脳会談は両国外相による停戦文書の署名と同時に行われる可能性がある。ロシア代表団のメジンスキー大統領補佐官は29日の交渉後、「結果を持ち帰ってプーチン大統領に指示を仰ぐ」とした。

タス通信によると、ロシア国防省は29日、ウクライナのキエフ周辺などでの軍事活動削減について、相互の信頼を醸成し、今後の対話を促進するための措置だと説明した。米CNNテレビによると、米国は露軍がすでに移動を始めていることを監視しているという。

一方、ショイグ露国防相は29日、ウクライナ軍の戦闘能力が著しく低下し、今は東部ドンバス地域の「解放」に戦力を集中していると表明した。キエフ攻略などの作戦難航を受け、方針を転換させている可能性もある。英国防省が28日に発表した分析によると、ロシアの民間軍事会社「ワグナー」の傭兵(ようへい)も派遣し、戦力増強を図った。

一方、ウクライナ国内での戦闘は29日も続き、南部ミコライフでは行政施設に露軍のミサイル攻撃が着弾し数人が死亡した。露軍の包囲が続く東部マリウポリでは28日、ボイチェンコ市長が同市での死者が5千人近くに達し、うち210人が子供だと発表した。市内にはなお市民16万人が取り残されているとした。

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