【ソウル=桜井紀雄】韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)次期大統領と文在寅(ムン・ジェイン)大統領が28日、大統領府で夕食を共にしながら会談した。両氏の会談は9日の大統領選で尹氏が当選後初めて。尹氏が優先する大統領執務室の移転問題や、政府の人事で現政権との対立が表面化しており、両氏が直接会談でどれだけ歩み寄れるかが焦点だ。
これに先立ち、尹氏は相星孝一駐韓大使とソウルで面談し、「韓日関係は未来志向的に、過去のように良い関係に修復されなければと思う」と述べた。尹氏は「韓日は安全保障や経済などの課題を共有するパートナー」との認識も示し、閉塞(へいそく)した両国関係を克服するために「正しい歴史認識に基づき、協力関係を築けるよう共に知恵を集めよう」と呼びかけた。
北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射をめぐっても「北朝鮮に核で得られるものはないと確信を持たせるよう韓米日3カ国の一層緊密な連携が必要だ」と強調した。文政権の親北外交で崩れた日米韓安保協力を立て直すとの意思を再確認した形だ。
尹、文両氏は16日に会談予定だったが、実務者間の事前協議がまとまらず、先送りされた。当選後の現・次期大統領の初顔合わせとしては歴代大統領と比べて大幅に遅く、対立の深さを物語っている。尹氏側は新型コロナウイルス禍での自営業者らへの補償問題から話し合いたいとしていた。尹氏が描く大統領執務室の国防省庁舎への即時移転計画に文政権は難色を示しており、妥協点が見いだせるかが注目される。
28日発表の世論調査によると、尹氏就任後の国政運営について「うまくいく」と予想する人は46%、「うまくいかない」との答えが49・6%に上った。尹氏は二分した世論を背に難しい国政運営を迫られそうだ。