「書く」が生徒の学び、考える力に JICA中高生エッセイコンテスト アクティブ・ラーニングで活用広がる

新学習指導要領がスタートし、中学校・高校の授業に変化が求められている。主体的・対話的な深い学び(アクティブ・ラーニング)の実現に向け、教師は生徒が自ら社会や世界に視野を広げる機会を提供できるかどうか。教科書の枠にとどまらないテーマ探しが課題になるなか、JICA国際協力中学生・高校生エッセイコンテスト(独立行政法人国際協力機構〈JICA〉主催)の活用が広がっている。生徒が身近な題材から世界とのつながりを学ぶきっかけとして授業や課題に取り入れる学校を取材した。

ものづくりの視点から世界を考える

宮崎県北部に位置する延岡市は、大手化学メーカー発祥の地として知られる戦前からの工業都市。いまも工場が建ち並ぶ街の人材を育成する県立延岡工業高校は「ものづくりの視点から世界を考える」が夏休み恒例のテーマになっている。

全学年の英語の課題に毎年、JICAのエッセイコンテストへの応募を設定し、生徒は3年間を通して向き合うためだ。機械や電気電子、環境化学など専門知識・技術を習得する普段の授業に加え、「世界の現状に関心を向け、英語を学ぶ意味を見いだしてもらいたい」(同校)と採用した。近年は、世界的な環境負荷の拡大や天然資源の消費などものづくりの「負」の側面も指導で触れ、多面的な視点を養うとともに、SDGs(持続可能な開発目標)の一つ「つくる責任 つかう責任」への理解を後押ししている。

一方で、授業はSDGsを学ぶボードゲームを利用し、書き出しのひな型を示すなどエッセイの堅苦しさや苦手意識の払拭に努める。

延岡工業高校の1年生の英語の授業はSDGsボードゲームを使って、世界の現状について英語・日本語両方で学んでいる
延岡工業高校の1年生の英語の授業はSDGsボードゲームを使って、世界の現状について英語・日本語両方で学んでいる

添削などで文章に手は加えないが、昨年は高校生の部の応募全2万5215作品のうち入賞となる「佳作」に生徒3人が選ばれた。英語科のエッセイ担当教師は「書く機会を与えるだけで、生徒の知る力、学ぶ力、考える力の伸長につながると実感した」と話した。

同世代の受賞作を参考に「書き方講座」

コンテストの過去の作品を教材にするケースもある。広島県の府中町立府中中学校は夏休み前に、これまでの受賞作を基に「書き方講座」を実施。エッセイの題材探しに悩む生徒に考えるヒントを与えている。

「世の中とつながるSDGsの視点」を経営計画に取り入れる同校は各教科で、日ごろから生徒の視野を広げる授業を展開している。例えば、2年生は家庭科で環境や社会に配慮した「エシカル(倫理的)消費」を学び、自らの商品を選ぶ方法や基準をプレゼンテーション。3年生は英語で世界の海洋ゴミの現状を読み、地球のためにできることをスローガンで表現している。

重要だと思うSDGsの目標を話し合う府中中学校の生徒
重要だと思うSDGsの目標を話し合う府中中学校の生徒

夏休みの課題となるエッセイも、SDGsの学びを体験や考えと結び付ける機会として活用する。書き方講座では、グループ別に過去の受賞作を分析。同世代の筆者の気付きや行動、発見など構成内容を書き出し、日々のささいな出来事を世界とつなげる視点の手がかりとしている。昨年は中学生の部の応募全2万3170作品から、生徒1人が佳作を受賞。同校は「苦労しながら題材を見つけてまとめる経験が、生徒の考えを広げ、深めている」と語った。

持続可能な社会の担い手の自覚に

世界を考えるエッセイによって、地域への関心を高めるケースもある。横浜国立大学教育学部附属鎌倉中学校は、社会科の地理的分野の授業にコンテストを取り入れる。

資源・エネルギーや環境、民族紛争など地球規模の課題を扱う授業のなかで、生徒は各地域の実情を踏まえた解決や地域づくりの重要性を学ぶ。教科で得た知識を活用して発揮する「場」となるコンテストの応募前には、テーマついて話し合う時間を設定。個人の感想にとどめず、「どうすればよいか、何ができるのかをより深く考えさせる」(社会科の戸沼雄介教諭)。

過去には議論が白熱し、民族紛争から貧富の格差、「できること」にテーマが変化したことも。地球規模の課題を、自らの行動を見直し、地域に眼差しを向けるきっかけにしている。結果、2021年度は国際協力特別賞と佳作を各1人が獲得。「SDGs未来都市」に選ばれている地元・鎌倉市の取り組みを取材し、学生団体で活動する生徒もいるという。

鎌倉市の地域課題について住民と話し合う附属鎌倉中学校の生徒
鎌倉市の地域課題について住民と話し合う附属鎌倉中学校の生徒

戸沼教諭は「地域への関心を養うことが、持続可能な社会の担い手としての自覚に結び付いてくれたら」と話した。

JICAの担当者にポイントを聞いてみた

Q JICA国際協力エッセイコンテストとは

A 1962年から開始し、2021年度で中学生の部が26回目、高校生の部は60回目という歴史のある事業だ。開発途上国の現状や日本との関係について理解を深め、国際社会の中でどのように行動するべきかを考える機会の提供を目的としている。

毎年6月~9月を募集期間としているので、夏休みの課題に設定する学校が多い。事前・事後学習のツールとしても活用すれば、教育的効果がより高まると考えている。

Q 教育を取り巻く現状との関係は

A 22年度から高校でもスタートする新学習指導要領の前文には、「持続可能な社会の創り手」の育成が掲げられ、SDGsの達成も意識されている。高校では社会の必修科目である「地理総合」の3本柱の一つとして「国際理解と国際協力」が明記されている。SDGsや国際協力はコンテストの目的と照らし合わせて親和性が高い。

また、注目されている「探究型学習」でも活用が期待される。エッセイの執筆は課題を設定し、調べたり考えたり分析・行動したりすることで自分の考えを表現していく。まさに探究のプロセスだ。

Q どんなテーマを課しているか

A 世界や地球のあらゆる課題を「ジブンゴト」として捉え、自分には何ができるかを考えてもらえるようテーマを設定している。 21年度は「私たちと地球の新しい未来」だった。SDGsや新型コロナウイルス、東京オリンピック・パラリンピック、環境問題を取り上げた作品が多く集まった。

22年度は「世界とつながる私たち~未来のための小さな一歩~」がテーマ。生徒一人ひとりが自分と世界との接点から、未来に向けて何ができるか考え、行動したことをエッセイにしてくれると期待している。

Q 審査基準は

A 作文力よりも、オリジナリティーや国際協力への理解、提案力・行動力に重きを置いている。実際に何かを行ってみた経験や、さまざまな出会い、出来事、見聞きして感じたこと、考えたことを中高生の目線で自由に表現しているかどうかだ。

1次審査は都道府県別、2次審査は地域ブロックごとに行い、絞り込まれた作品を最終審査し、最優秀賞、優秀賞、審査員特別賞などを決める。最終審査員長は中学生の部は教育評論家で法政大学名誉教授の尾木直樹さん、高校生の部は女優でエッセイストの星野知子さんだ。

Q メッセージを

A 身近なところから、世界とのつながりを感じることはたくさんある。例えば、地域に住む外国人や留学生、新型コロナウイルス感染症の世界的な広がり、ニュースで見た世界の災害や紛争。普段何気なく口にしている食べ物や着ている服からも、世界は見えてくる。そこから未来をよりよくする小さな一歩を考えていけたらと思う。

10代の若い感性で、自分の思いを「言葉」にするJICAエッセイコンテスト。言葉にすれば世界を動かす力になっていくはず。たくさんの応募を期待している。

「JICA 国際協力中学生・高校生エッセイコンテスト」の募集概要はこちら ※エッセイの書き方をサポートする準備用ワークシートもダウンロードできる

※2022年度の募集期間は2022年6月7日~9月11日(予定)。学校応募だけでなく、個人でも応募できる。

提供:独立行政法人国際協力機構(JICA)

会員限定記事会員サービス詳細