一番守るべきものは何か
ロシアがウクライナ侵攻を開始して1カ月超。ウクライナ軍の激しい抵抗もあり、短期決着に失敗したロシア軍は民間施設を含む無差別攻撃を続け、犠牲者は増えるばかりだ。ロシアの蛮行を前にあらためて戦争と人命について考える、そんな折、SNSで、ある政治家の投稿を目にした。
《大学生の娘と「一番守るべきものは何か」という話になった。娘は「それは命でしょ」と即答。それならばウクライナはロシアに即時降伏するだろうし、国民が国に残って戦うことはない。彼らが独立と民主主義に命以上の価値を置いて戦っている姿から我々は目を背けてはいけないと思う。》
このやり取りを我々はどう受け止めるべきだろうか。この政治家の娘さんの考え方は我が国では決して珍しくはない。著名人も含めて少なからずウクライナの政治指導者に降伏を促す声がある。指導者は国民の生命を守るためにあらゆる手段を尽くすべきとの論理は確かに説得力がある。ただ、同時に「命以上の価値」のために戦うウクライナの国民を否定できる人もいないだろう。