プロフェッショナル

生みの苦しみ達成感大きく グラフィックデザイナー 井上貴由さん

グラフィックデザイナー兼イラストレーターの井上貴由さん(須谷友郁撮影)
グラフィックデザイナー兼イラストレーターの井上貴由さん(須谷友郁撮影)

「デザインのアイデアは出尽くしているため、生みの苦しみは常にある。それだけに新しい作品ができたときの達成感も大きい」

大阪市浪速区でデザイン制作会社「プロジット」を経営する井上貴由さん(43)はグラフィックデザイナーの魅力をこう語る。デザイン業界にかかわってから20年以上になる。

主な仕事の依頼は自動車部品関連の展示会のポスターや告知はがき、パンフレットのデザインなど。CG映像を建物などに投影する「プロジェクションマッピング」のイメージ画も多く手掛けるが、「デザインは企画、運営、演出などすべてが決まったあと」といい、時間との戦いだ。急な内容変更で最低2日かかる仕事を「2時間でほしい」という依頼もあった。「あの時はさすがにきつかったが期待に応えた」とプロの意地を見せる。苦労も多いが、「こうした切羽詰まった仕事のおかげで鍛えられたのかもしれない」と今ではプラスに捉えている。

小学生の頃から絵が得意だった。「雨の日は家でドラゴンボールなどのアニメの絵を描いて遊んだ。鳥山明のファンだった」と懐かしむ。絵の中でも特に好きだったのがイラスト画。高校ではより顕著になり、「美術の課題では『イラスト風に描くな』と毎回先生に怒られた」と振り返る。「骨標本とモデルガン」など、誰もモチーフにしないような題材に挑戦して独自性も発揮した。

高校卒業後はイラストレーターを目指し、大阪市西区の大阪コミュニケーションアート専門学校(現OCA大阪デザイン&ITテクノロジー専門学校)のイラストレーターコース(2年制)へ進学。早く社会へ出て自分の力を試したかった。

イラストの基礎や応用を学ぶ中、写真を使ってポスターづくりなどに取り組むグラフィックデザインの授業もあり、「今まで知らない世界だったので楽しくて夢中になった」という。その出会いがきっかけとなり、就職はグラフィックデザイナーの道を選んだ。

最初は苦労の連続で、働きながらスキルを磨き、壁にぶつかるたびに学習した。やっと一人前になった33歳のとき、前社長から会社を譲り受けた。経営のノウハウはなく、経験を積みながら自分なりのやり方を築いた。ここまで独学で道を切り開いてきた。

経営の傍ら、母校で講師を務めて4年目になる。就職希望先へ自己アピールするための作品集の作り方を後輩たちに指導しているという。「昔は面接者に直接作品を売り込めたが、今は事前に作品データを送り、気に入ってもらえないと面接に進めない」。説明がなくても伝わる工夫などをアドバイスしている。

講師をしてから再びイラストも描き始めた。憧れる海外のイラストレーターの作風をヒントにした新作はSNSにも投稿。女性をモチーフにした独特な感覚で「いつかミステリー小説などの表紙や挿絵の仕事がくればうれしい」。そんな夢を描いている。(北村博子)

必要な資格はないが、デザイン系専門学校や美術・芸術系大学などで必要な知識や技術を学び、広告制作会社やデザイン事務所に就職するのが一般的。専門学校はデザインに特化したスキルを2~3年で習得できるので就職には近道。

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