新型コロナウイルス不況からの景気回復と産油国ロシアへの経済制裁が重なって、エネルギー価格上昇が加速している。世界はインフレ局面突入でも、日本は逆に物価が下がるデフレが続く異様さだ。おまけに円安が進むが、悲観は無用。財政・金融政策を駆使すれば円安を日本再生のテコにできる。
ところが、岸田文雄首相は財政政策では財務官僚の均衡財政主義に引きずられ、日本銀行の政策決定を担当する審議委員人事では反金融緩和派を指名する始末である。メディアでも、インフレ、そして円安を警戒すべきだとの論調が目立つが、日本経済の実相は違う。
世界共通のインフレ指標はコア消費者物価と呼ばれる。天候に左右される生鮮食料品や国際情勢の変動に左右されるエネルギーを除き、需要と供給の関係が決める経済法則を反映する。日本のコア物価上昇率は2020(令和2)年8月以降、最新統計の今年2月までゼロ%以下だ。1990年代後半以降、コア消費者物価が前年比プラスになった期間の大半は消費税税率が引き上げられたあとの1年間前後に限られる。