焦る母の朝晴れエッセーと意志強め5歳娘の朝の詩

読者も協力のランドセル捜索

「きいろのらんどせる」を背負って誇らしげな上杉花ちゃん。入学式はもうすぐだ=東京都内(桐原正道撮影)
「きいろのらんどせる」を背負って誇らしげな上杉花ちゃん。入学式はもうすぐだ=東京都内(桐原正道撮影)

「緑のランドセル」は「きいろのらんどせる」になりました―。昨年6月、産経新聞朝刊1面の「朝晴れエッセー」に東京都清瀬市の上杉葉子さん(45)が寄せた「緑のランドセル」が掲載された。小学校入学を控えた長女、花ちゃん(6)が納得する緑色のそれが見つからず、焦る気持ちをつづった。読者の反響も大きく、その後を尋ねると、当時5歳の花ちゃんは8月の同じ朝刊1面「朝の詩」に〝返信〟を寄せていたことが分かった。4月、花ちゃんは入学式を迎える。詩のタイトル「きいろのらんどせる」を背負って。

見つからない「緑」

上杉さんは昨年5月初旬、花ちゃんの希望する緑色のランドセル探しを始めた。すぐに見つかると思ったが、「こだわりと意志が強くて周りに流されないタイプ」(上杉さん)という花ちゃんが首を縦に振る一品が1カ月たっても見つからない。

来年就学予定の娘のランドセル選びが難航している。まだ焦る必要はないとは思うのだが、ランドセルは季節ごとに新作が出るわけではないので、今ある中から探さなければいけないと思うと、やはり焦りを感じる。娘の第…

上杉葉子さんの朝晴れエッセー「緑のランドセル」(令和3年6月17日付産経新聞朝刊1面から)
上杉葉子さんの朝晴れエッセー「緑のランドセル」(令和3年6月17日付産経新聞朝刊1面から)

《色鉛筆や油性ペンの基本セットにあるような、緑らしい緑がずっと大好きなのだ》

《ランドセルは一生に一度の買い物》

《来年度の新作に緑があることに望みをかけて、入学間近に購入することを狙おうか、本気で迷っている》

親の焦る思いをしたためたエッセーが6月17日付朝刊1面に載ると反響は大きく、複数の読者から「娘さんの笑顔いっぱいの春になりますように」といったメッセージとともに、カラーバリエーションの多い店の情報が産経新聞社に寄せられ、上杉さんにも伝えた。

すでにチェック済みの店もあり、それらの情報が決め手となることはなかったが、上杉さんは「悩んでいた時期だったので、温かい反応がうれしく、ありがたかった」と振り返り、その後を教えてくれた。

みどり、あか、くろ、そして…

夏本番を迎える頃には、花ちゃんも望む緑色はないと納得。赤、黒色と迷った後、売り場の片隅にあった黄色のランドセルを見て「黄色がいい」と言い出した。

あれだけ色にこだわっていただけに、上杉さんが何度も確認すると、ある朝、突然「詩を書く」と言って一編の詩を書き上げた。それが8月10日付朝刊1面の「朝の詩」に載った「きいろのらんどせる」だった。

上杉花ちゃんの朝の詩「きいろのらんどせる」(令和3年8月10日付産経新聞朝刊1面から)
上杉花ちゃんの朝の詩「きいろのらんどせる」(令和3年8月10日付産経新聞朝刊1面から)

《わたしははじめは / みどりがよかった / けれど / つぎはあかがよかった / つぎはくろがいいと / いった / つぎはきいろがいいと / いった / わたしのいけんは / もうかわらない。》

黄色という選択に半信半疑の母に対し、そのアンサーポエムは当時5歳だった少女の、確固たる意志を簡潔にずばりと伝えていた。

朝晴れエッセーや読者投稿欄によく投稿、掲載されている上杉さん。花ちゃんはそんな母の姿を見て、普段から「やってみようかな」と朝の詩に興味を示していたという。タイトルまでつけられたその詩は、まさに朝の詩。驚いた上杉さんはひらがなの間違いを直す以外は手を加えず、すぐに投稿した。

記者を含め人知れず産経新聞の朝刊1面上で交わされていた親子の対話。上杉さんが「詩として成り立っていてびっくりしたし、娘の成長を感じてうれしくなりました」と振り返り、花ちゃんも「新聞に載ってうれしかった」と喜ぶ。

届いた「らんどせる」

ようやく見つけたお気に入りの「らんどせる」を手に、うれしそうな上杉花ちゃん=東京都内(桐原正道撮影)
ようやく見つけたお気に入りの「らんどせる」を手に、うれしそうな上杉花ちゃん=東京都内(桐原正道撮影)

今年に入り、注文していた黄色のランドセルが届いた。花ちゃんは「外も中も全部黄色なのがすごくいい」とお気に入りの様子で、「小学校では昼休みにうんていを頑張りたい」と活発そうな笑顔を見せる。

兄の直(なお)君(9)の影響で将棋を始め、将来の夢はプロ棋士だという。上杉さん夫妻は「私たちの願いは健康に安全に毎日を楽しく過ごしてくれること。いろんなことに挑戦し、たくさんの経験を積んで成長してほしい」と話すと、顔を見合わせて「花の頑固な性格がもう少しマイルドになってくれるとうれしいですね」と温かな笑い声をあげた。(田中佐和)


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