電気自動車の消費電力は、どこまで抑えられるか  EVが“電欠”にならないために知っておくべきこと

タイヤの選択が及ぼす大きな影響

エアコンのように航続距離を延ばすためにオフにすることはできないが、タイヤはEVの効率において主要な役割を果たしている。タイヤのスタートアップであるENSOの創業者のガンラウワー・アーレンソンは、「低品質のタイヤをクルマに付けると航続距離に大きく影響します」と語る。

ピレリ北米法人のCTOのイアン・コークも、アーレンソンと同じ考えだ。コークによると、EVで適切なタイヤを使わないと、航続距離の損失とノイズの増加といった特性に気づく可能性が高くなるという。しかも、「こうした特徴はパワートレインによってさらに大きくなる」

ENSOが開発しているEV専用のタイヤは、ルノーのEV「ZOE」の航続距離を11.5%増やせたという。これが真実なら、この距離の増加によってバッテリー劣化による総計数千キロメートル相当の航続距離の減少を相殺し、新車から3~5年が経過したクルマに理論上は新車時と同じ航続距離を与えられるのだと、アーレンソンは語る。

タイヤの交換だけで、操作や性能に影響を及ぼさずに航続距離を伸ばす方法については、さまざまな要素が関係するとのだという。「原材料、相性、構造、トレッドデザインの組み合わせによって、航続距離を伸ばすこれらの要素が最終的に決まります。さらに、軽量であることも重要です」と、アーレンソンは言う。「より優れた原材料を使えば使用量をそれなりに減らせますし、結果的に総重量を削減できます。しかもこれらの改善は、ほかの数値を犠牲にすることなく実現できるのです」

停止時の電力消費は?

EVを起動する際には物理的なキーやスタートボタンを使わないことも多く、未来的な体験をしているような気にもなる。だが、「テスラ モデル3」や「Polestar 2」のようなEVに運転スタートの手順がないからといって、発進させるまでクルマが一切エネルギーを消費していないと考えてはならない。

Silver Power Systemsのビショップは、アクセルポジションのセンサーや傾斜角センサー、ダッシュボードのディスプレイ、パワートレインのコントロールモジュール、セキュリティシステムまであらゆる電装品の消費電力を総合することで、平均的なEVはアイドリング時に260Whのエネルギーを消費すると結論づけた。これはかなり少ない電力だが、1時間あたりの航続距離にすると約1.44kmに相当する。

これと近い話だが、テスラのEVには「キャンプモード」がある。これは駐車しながら長時間にわたってエアコンを稼働させ、クルマの中で眠れるというものだ。キャンプモードでは、8時間で「モデル3」のバッテリー容量の約10~15%を消費する。

すべてを総合すると……

ここまでに挙げてきたすべての要素を合計すると、1時間の走行で消費される航続距離は「16km程度」になる。つまり、1台のEVの二次システム全体で、1時間あたり約16km分のバッテリー残量を消費することになる。

もちろん、実際の走行距離は状況によって異なる。周囲の気温が唯一かつ最大の要素であることは、寒い日に前もって充電器に接続しておかなかったEVを運転するときに最も強く感じられる。

結局のところ、クルマを充電器に接続して運転前にバッテリーを余熱して車室を温めておくことが、航続距離を維持するためにできる唯一で最大の手段ということになる。出発前にルートと充電場所の計画を立てておくことも大切だ。

いい知らせとしては、シートヒーターをオフにしても航続距離に意味のある違いはなさそうである。また、EVの車内を暖かく保つようにするほうが、急激に温めようとしてヒーターを酷使するよりもバッテリーにずっと優しい。

(WIRED US/Translation by Mayumi Hirai, Galileo/Edit by Daisuke Takimoto)

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