電気自動車の消費電力は、どこまで抑えられるか  EVが“電欠”にならないために知っておくべきこと

Silver Power Systemsのビショップの計算では、循環用のファン、加熱と冷却のシステム、フロントガラスとリアガラスのヒーター、ミラーやシート、ハンドルのヒーターを対象にしている。そのなかでも加熱・冷却のシステムは、それぞれ最大で3kWと4kWと間違いなくこのカテゴリーで最大の電力を消費しており、1時間の使用で8.3~11.1kmの航続距離を奪うことになる。

興味深いことに、シートヒーターはクルマの乗員を温めるかなり効率の高い方法だ。シートあたりの電力消費は50Whで、1時間の使用で奪われる航続距離はわずか560mにすぎない。

照明装置は意外と電力を消費しない?

EVオーナーたちはこれを聞いてうれしく思うだろうが、照明装置の消費電力は非常に少ない。ビショップの計算では、EVのすべての外部照明システムを一般的な方法で使用した場合でも、エネルギー消費は48.80Whだ。

これはエネルギー消費が180Wh/kmのクルマの場合(例えば「ポルシェ タイカン 4S」「テスラ モデルY パフォーマンス」など)で0.27km/hに相当する。つまり、1時間の走行で失われる航続距離はわずか270mだ。

進化したインフォテインメントは?

クルマのインフォテインメントシステムは過去10年で大幅に進化し、なかには車室全体に広がるシステムまであるほどだ。ポルシェ タイカンのような一部のクルマは、購入時にデジタルディスプレイを最大5個まで搭載できる。テスラの「モデルS」と「モデルX」の最新世代では強力なCPUを搭載しているが、その処理能力は10テラフロップスとされ、これは最大消費電力が350Wという「PlayStation 5」とほぼ同じだ。

これらのシステムは、いずれも数年前の単純なオーディオやカーナビのシステムと比べると消費電力はかなり大きい。例えば、一般的なカーステレオを大音量で再生すると消費電力は100Wに達することもあるが、バッテリーへの負担はわずかである。100Whなら、1時間に失われる航続距離は約0.5kmになる。

指摘しておきたいのは、どれほど高級で大きな最大出力のサウンドシステムであったとしても、必ずしも普通のオーディオと比べてEVの電力を速く消費するとは限らない点だろう。Silver Power Systemsのビショップによると、ピーク出力が2,000Wを超えるサウンドシステムを誇るクルマを買うこともできるが、2kWという消費電力であっても実際にバッテリー残量に与える影響は小さいという。

ここで覚えておくべき重要なポイントは、オーディオがピーク出力に達するのはミリ秒程度に限られることが多いことだろう。たとえわずか1,000分の1秒であっても、それを出す能力が高価なオーディオシステムで優れた音を出す上で貢献するというわけだ。

さらにパワフルなサウンドシステムでは、コンデンサーを利用して電力の需要を最適化していることも知っておくといい。コンデンサーはクルマによってトリクル充電(微小な電力による充電)されたあと、追加の電力が必要になったときに電気を瞬時にシステムに送り込むために使われる。例えば、1ミリ秒だけ2,200Wに達する場合などだ。

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