電気自動車の消費電力は、どこまで抑えられるか  EVが“電欠”にならないために知っておくべきこと

最善の方法は、EVを充電器に接続している間は常にバッテリーを予熱しておくことだとフライは強調する。そうすれば、バッテリーの加熱と車内の暖房には電力網の電気が使われるので、クルマ自体からエネルギーが奪われることはない。

いったん設定温度に達してしまえば、EVは寒い状態から始めたときよりはるかに少ないエネルギーで温度を維持できる。「例えば、テスラの『モデル3 ロングレンジ』のバッテリーパックを0℃から20℃までヒートポンプを使わずに温めるには、2.4kWhのエネルギーが必要です。これはテスラが利用できると主張するエネルギーの3.4%に当たります」と、フライは語る。

電装品のエネルギー消費を調べてみた

EVの二次システム(エアコンや照明、運転支援システム、オーディオなどの電装品)の使用状況は、バッテリーにとって重要な要素のひとつだ。明らかに電力を消費する加熱と冷却以外に、こうした電装品の利用が航続距離にどれだけ影響を及ぼすのか詳しく知るには、「Electric Vehicle Database」にあるようなEVのエネルギー消費率を示す「1kmあたりの消費電力(Wh/km)」を調べる必要がある。

そうなると電卓で計算する必要があるのだが、今回はピート・ビショップの助けを借りることにした。EVのバッテリーの分析を専門に電機システムの設計を手がけるSilver Power Systemsの最高技術責任者(CTO)を務める人物だ。

ビショップが作成してくれたスプレッドシートには、EVを構成する50以上の部品やシステムの消費電力が詳細にわたってまとめられていた。これを使えば、各システムに起因する航続距離のおおよその減少が、1時間の走行距離ごとに明らかになる。なお、基になるデータはメーカーやサプライヤーの技術整備マニュアルに加えて、EVのオーナーたちが参加する掲示板から得た情報と、Silver Power Systemsが社内で収集したものだ。

今回はすべてのEVに関する複雑な統計セットを示すことはやめて、平均的な車両の消費を180Wh/kmに定めることにした。この数字に近いモデルとしては、「Polestar 2 Long Range Single Motor」と「マツダ MX-30」(いずれも176Wh/km)、「キア EV6 Standard Range 2WD」(177Wh/km)、「BMW i4 M50」(179Wh/km)、「ポルシェ タイカン 4S」(180Wh/km)、「テスラ モデルY パフォーマンス」(181Wh/km)などが挙げられる。

参考までに今回の指標の両端には、消費電力が少ないほうに「Lightyear One」(104Wh/km)と「テスラ モデル3」(151Wh/km)、多いほうには「メルセデス・ベンツ EQV 300ロング」(295Wh/km)のようなミニバンのEVが挙がっていた。

大きな位置を占めるエアコン

「EVの電力の二次的な用途としては、間違いなく車内の暖房とバッテリーの加熱が挙げられます」と、フォードの「Mustang Mach-E」のチーフ・プログラムエンジニアのマティアス・トンは説明する。

また、ポールスターの車両開発チームのクレメント・ハイネンは、「EVはガソリン車と比べて二次的な装置の占める割合がより高くなっています」と語る。「EVは高効率な電気モーターとバッテリーで動きますが、ガソリン車はエンジンから発生する排熱、つまり無駄になる熱を使って車室を暖めます。このためエアコンのようなその他の要素の影響が、(EVでは)非常に見えやすくなるのです」

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