救急搬送されクレーム、てんかん患者が直面する理不尽

啓発イベントで、自身の体験を話す後藤知佳さん(左)ら(ユーチューブから)
啓発イベントで、自身の体験を話す後藤知佳さん(左)ら(ユーチューブから)

100人に1人がかかる身近な病気であるてんかんの正しい知識を普及させる世界的キャンペーン「パープルデー」(3月26日)に合わせて同日、啓発のオンラインイベントが大阪市で行われ、動画投稿サイト「ユーチューブ」でライブ配信された。「前向きに生きていける人が一人でも増えてほしい」。イベントに出演した患者の女性はこう語り、病気への理解を求めた。

「今でも月に一度、急に意識がなくなって全身がけいれんする発作が起こる」。オンラインイベントに出演した患者の後藤知佳さん(28)は、こう明かした。11歳のときにてんかんと診断され、薬を飲み続ける生活が17年間続く。会社勤めをしているが、週に2~3回、会話や動作が中断してしまう発作もあるという。

てんかんは、脳の神経細胞が過剰に活動することによって、発作が繰り返し起こる病気だ。発作は全身のけいれんや硬直、意識の喪失、突然の脱力-などさまざま。乳幼児から高齢者まで幅広い年齢層で発症し、患者は全国に約100万人とされる。服薬で7~8割の患者が社会生活を支障なく送れる一方、薬で発作が抑えられない患者は外科手術などの専門治療を必要とする場合もある。

後藤さんは以前、営業先で発作が起こり救急搬送されたことがある。後日、営業先から「うちに救急車が来たことで、風評被害を受けたらどうしてくれるのか」とクレームが届いた。「誰もが理解してくれる病気ではないと分かっている」としながらも、「人の命よりも、会社の損得を気にかける人がいたことがつらかった」と振り返る。

パープルデーに合わせて紫色のマスクを着用する大阪市立総合医療センターの職員たち(同センター提供)
パープルデーに合わせて紫色のマスクを着用する大阪市立総合医療センターの職員たち(同センター提供)

一方で、病気を打ち明けても関係が変わらないこともあり「内側を見てくれる人もいる」と希望も見いだせた。「てんかんだったからできた縁や感じた喜びもあり、むしろ感謝している」と後藤さん。当事者として積極的に情報発信しており「(てんかんでも)前向きに生きていける人が増えてほしい」と語った。

パープルデーは2008年、カナダ人の9歳の少女が自らのてんかんを打ち明けた際の葛藤をきっかけに、「世界中の人にてんかんを知ってほしい」として創設された。病気の周知や患者同士のつながりを目的とし、シンボルカラーの紫色は少女が好きなラベンダーの花にちなむ。毎年3月26日には、世界各地でライトアップなどの啓発イベントが開催されている。

この日のイベントを監修したてんかんの専門医で大阪市立総合医療センター小児脳神経内科の岡崎伸副部長は「てんかんの患者は身の回りに必ずいるはずだが、偏見や誤解を恐れて打ち明けられない人が多い」と指摘し、「患者の不安に寄り添える社会になってほしい」と訴えた。(桑村大)

会員限定記事会員サービス詳細