ロシアのウクライナ侵攻に対する制裁はグローバルな広がりをみせている。勢力圏維持というローカルな動機に基づく侵攻に米欧が結束し、日本も加わって対露包囲網を形成したことはプーチン露大統領にとって誤算だったはずだ。
米欧は、ロシアの一部銀行を国際銀行間通信協会(SWIFT)から排除することを表明した2月26日の共同声明で、今回の戦争をプーチン氏の「戦略的失敗」となるようにするとした。レジームチェンジ(体制転換)を目指すかの合意はないものの、制裁目的に関する重要な表明だ。
日本での議論で興味深いのは、今回の事態に対応しないと中国がらみの有事に何もしてもらえないという声が出ていることだ。2014年のクリミア併合時にはなかった議論だ。当時は中国による台湾の武力統一はリアルにとらえられていなかったし、中露関係も今ほど緊密ではなかった。
確かに、侵攻を防げなかったという意味で、西側はロシアの抑止に失敗した。しかしながら、経済制裁という罰によって抑止を狙うこと自体が新しい発想だった。ロシアは、同国にエネルギーを依存するドイツがなびいてくると高をくくっていたのではないか。
しかし、ドイツは目覚めた。ショルツ独首相はウクライナ侵攻後、国内総生産(GDP)比1・5%ほどの国防費を2%以上に引き上げることや、連邦軍の装備増強のため1000億ユーロ(約13兆円)の基金を設けることを表明した。
ドイツが装備を拡充すれば、インド太平洋への関与にも活用できるはずだ。インド太平洋と欧州のどちらが重要かというゼロサム的な考えでなく、中国の台頭もロシアのウクライナ侵攻もグローバルな問題ととらえてしっかり対処しなければいけない。これが今回の事態の教訓になる。(談)