ウクライナ 首都近郊で露軍が数十キロ後退 作戦修正の動き

米国防総省高官は23日、ウクライナの首都キエフ東方20~30キロで待機を続けていたロシア軍がウクライナ軍の攻撃により約55キロ地点まで押し戻されたことを明らかにした。キエフ包囲を狙う地上部隊が補給不足や強力な反撃で停滞を続け、一部で後退を余儀なくされたもようだ。一方でロシアは親露派支配地域に近い東部地方に作戦の重点を移しつつあるという。

高官によると、キエフ北方チェルニヒウの包囲を目指す部隊もウクライナ側の攻撃で一部が後退した。要衝オデッサに近い南部ミコライフ郊外では激しい戦闘により露軍に再配置の動きがみられるとした。

AP通信によると、NATO高官は侵攻から約1カ月で露軍側の死者が7千人から1万5千人に上るとの見積もりを示した。アフガニスタン侵攻(1979~89)の旧ソ連の戦死者約1万5千人に匹敵する数字。国防総省高官は犠牲者の確認を避けたが、露軍が地上に加え航空の戦闘でもリスク回避の動きを指摘した。半面、侵攻開始から発射されたミサイルは1200発を超えた。

高官は、親露国ベラルーシからの兵力投入は現時点でないとしつつ、いずれ国外から補強を進めるとの見方を示した。

高官は一方で、露軍が東部マリウポリとその北方のイジュムを結ぶ一帯での戦闘に集中しつつあるとの見方を示している。東部ドンバス地方を支配する親露派武装勢力と戦闘を続けるウクライナ軍を封じ込める狙いがあるという。マリウポリでは激しい爆撃や市街での戦闘が継続。近郊のアゾフ海沿岸で揚陸艦から車両を上陸させて補給する動きが確認された。

ウクライナ軍の戦闘を支える米国の軍事支援は2月下旬に承認された3億5千万ドル相当は数日以内に供与が完了。今月16日に発表された8億ドル分の追加支援の輸送に移る。高官は、地上の輸送路が複数あり、維持されていると強調した。(ワシントン 渡辺浩生)

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