ウクライナ難民、西への移動本格化 無料列車バスで

【メディカ(ポーランド南東部)=三井美奈】ロシアのウクライナ侵攻からまもなく1カ月。国連の統計で約356万人が国外に脱出した。最大の受け入れ国となった東欧ポーランドには約210万人が流入。国境地帯の混乱は収まり、難民たちの西欧各国への移動が本格化している。

ピストン輸送

ポーランドのメディカ検問所には、ウクライナから1日約5千人が手荷物を抱えて徒歩でやってくる。ナターシャ・ベレズナヤさん(23)は友人2人とバスを乗り継ぎ、20時間かけて脱出した。熱いコーヒーを片手に、「砲撃がバスに迫って、怖かった。国境を越えて、ほっとした」と笑みを見せた。当面、オランダの知人宅に身を寄せる予定だ。友人たちはドイツを目指している。

メディカ検問所で、共にポーランドに脱出した友人と話すナターシャ・ベレズナヤさん(右)=19日、三井美奈撮影
メディカ検問所で、共にポーランドに脱出した友人と話すナターシャ・ベレズナヤさん(右)=19日、三井美奈撮影

侵攻開始当初、メディカには難民があふれたが、現在は移送態勢が整い、滞留することはなくなった。難民たちはまず、当局が用意したバスで10キロ離れた受け入れ施設に送られる。広大な駐車場に西欧各国の非政府組織(NGO)などの車両が数百台並び、無料で難民たちを移送している。

ドイツ南部ミュンヘンのNGO職員、ビクトル・ベルトさん(30)は、「週2回、医療品を国境に運び、難民たちを乗せて帰る。ミュンヘン市と連携し、受け入れボランティアの家庭に案内する」と話す。隣では、「イタリアのミラノ行き。5人OK」という看板を掲げたミニバスが止まっていた。

国際移動も無料で

施設近くの駅から、電車で目的地を目指す人も多い。ポーランドやドイツ、フランス、イタリアなど西欧の鉄道が連携し、ウクライナ難民は無料で都市間移動ができるようになったためだ。ポーランドの主要駅には案内所が設けられ、水や食料などの支援物資のほか、「安易に個人情報を他人に教えないこと」「地方都市の方が受け入れに余裕があります」と書かれたパンフレットを配っている。

市人口の17%に相当する30万人が流入したポーランドの首都ワルシャワには、約2万5千床の短期宿泊所が設けられているが、中央駅で雑魚寝する人もいる。キエフを脱出したアナスタシア・バジリクさん(38)は中学生の息子2人を連れて、1泊した。友人のいる英国に行くため、査証(ビザ)が出るのを待っている。「英国でしばらく働いて、戦争が終わったら一日も早く帰国したい。キエフに残った夫のことが気がかり」と話した。

滞在長期化の試練

欧州ではウクライナ侵攻以降、東欧を経由してドイツに約19万人、イタリアに約5万4千人、フランスに約2万人が流入したとみられている。

どこも最大の課題は、滞在先の確保。英国は難民受け入れ家庭に対し、月350ポンド(約5万5千円)の謝礼を支払うことを決定した。ドイツではNGOが受け入れ家庭の登録制度を進めており、これまでに約35万人分の滞在先を確保したとしている。ロイター通信によると、イタリア政府は17万5千人の受け入れ計画を策定している。

欧州連合(EU)は今月3日、ウクライナ人に1年以上の滞在を認める「一時保護措置」をとることで合意。難民資格の申請なしに、教育や就労の権利が受けられるようになったことも移動を加速させている。

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