令和4年度予算が22日に成立したのを受け、与野党は7月の参院選に向けた活動を本格化させる。ただ、双方とも経済対策などをめぐり、身内同士の不協和音が目立つ。参院選に向けて足元のしこりを解消し、党内融和を図れるかが焦点となる。
「誰だけが困っていると言ったことは一度もない。いろいろな方が困難に直面している。丁寧にきめ細かく対策をとっていく」
自民党の茂木敏充幹事長は22日の記者会見で、年金生活者への支援策についてこう述べた。別の記者が質問を重ねようとすると「私の答えを聞いていたか」と遮る場面もあった。
茂木氏がいらだつ背景には、党内で年金生活者への支援策が不評を買ったことがある。
支援策は15日、茂木氏と公明党の石井啓一幹事長が岸田文雄首相に要望したのを機に表面化した。新型コロナウイルス禍による現役世代の賃金低下に伴い、来年度の年金額が減るのを踏まえ、年金受給者を対象に1人当たり5千円の臨時給付金の支給を求めるもので、首相と茂木氏、自民の麻生太郎副総裁が主導したとされる。
だが、党内で議論せずに首相に申し入れたことで「党内議論をしっかりやるのが自民党の伝統だ。ぜひそうあってほしい」(森山裕総務会長代行)などと注文がつき、政府側からも「独断専行だ」(財務省幹部)など異論が噴出した。
首相は22日の参院予算委員会で、臨時給付金について「物価高騰の状況などさまざまな観点にかんがみて対策を考えていかなければならない。その中で扱いを検討したい」と述べた。当初の年金受給者への支援策は練り直しとなる見通しだ。
ガソリン税の一部を減税する「トリガー条項」の凍結解除をめぐっても、党内の足並みは乱れた。自民、公明、国民民主の3党幹事長が16日、具体策に関する検討チーム創設で合意すると、高市早苗政調会長は記者会見で「聞いていない」と不快感をあらわにした。高市氏は17日に首相と面会した際、政策案件は政務調査会の議論を経なければならないと定めた党則を示し、抗議したという。
自民は全国の知事選で「保守分裂」が相次ぎ、地方組織の結束にも不安を残す。有権者の関心が高い経済政策をめぐり執行部の確執が深まれば、参院選に向けた総力戦に水を差しかねない。(広池慶一)