コロナ禍3度目の卒業式 「晴れ舞台」へ追い風も

武蔵野大で行われた卒業式で、検温を受ける卒業生ら=17日午前、東京都西東京市(太田泰撮影)
武蔵野大で行われた卒業式で、検温を受ける卒業生ら=17日午前、東京都西東京市(太田泰撮影)

新型コロナウイルス禍で3度目となる卒業シーズンを迎えるなか、学校現場で教職員らが子供たちに「晴れ舞台」を用意しようと試行錯誤している。18都道府県に適用中の蔓延(まんえん)防止等重点措置も21日までで解除され、式典を挙行する追い風に。小中高校や大学では、感染対策と授業の両立などの知見が着実に積み重ねられており、教育活動に「正常化」の兆しが目立ち始めている。

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「卒業生、入場」。東京都荒川区立第三日暮里小の体育館で17日、1週間後の24日に予定された卒業式の練習が行われていた。アナウンスを合図に姿を見せたマスク姿の6年生は、感染対策で間隔を空けて配置された席に静かに座った。

卒業生は2学級の69人。コロナ禍以降、飛沫(ひまつ)を防ぐため、卒業式での合唱は中止しており、今回も事前に録音した卒業生らの歌声をスピーカーで流し、歌詞を手話で表現する。

昨年まで在校生の出席は見合わせてきたが、今年は約70人の5年生も参列する。「本番の卒業式を間近で見ることによって、新年度から自分たちが最高学年になるという実感を持たせるのが目的」と末永寿宣(としのぶ)校長(60)は語る。

練習に参加した6年生の男子児童(12)は「自分たちの卒業式をイメージできた。本番は絶対に成功させたい」と話した。

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卒業式を昨年よりも手厚い内容で行おうとする動きは、各地の学校でみられる。今月11日に卒業式を行った大阪市立下福島中では、式典での卒業証書の授与は昨年まで2年連続で代表の生徒にとどめていたが、今年は205人の卒業生全員に壇上で手渡した。

卒業証書の授与は義務教育終了の節目を象徴する大切な儀礼で、「従来に近い形で行うことが望ましいと判断した。巣立つ子供たちにも卒業の意義を感じてもらうことができたのではないか」(同校教員)。

式典の規模が大きくなりがちな大学でも密回避のため日時を分散したり、対面とオンラインを併用したりする工夫を凝らす。東京都の武蔵野大は17、18日の2日間、西東京市のキャンパスで7回に分けて卒業式と修了式を実施。学部ごとに各回を約30分に短縮し、約2500人を送り出した。

一昨年の式典は中止を余儀なくされた。昨年からオンラインを導入して希望する学生や保護者に式の様子をライブ配信しており、高校の教員になるという卒業生の日高紗瑛梨(さえり)さん(21)は「新潟県にいる祖父もオンラインで式を見守ってくれた」と喜んでいた。

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感染状況の改善傾向も学校側の背中を押す。文部科学省の集計によると、9日時点で臨時休校と学級・学年閉鎖となっている公立小中高校などは計3215校。1月26日時点の計5841校から約45%減った。

コロナ禍当初の全国一斉休校で学校現場は大混乱に見舞われた。地域ごとに異なる感染状況を踏まえ、卒業式や修学旅行など行事の具体的な運営は、学校現場に臨機応変な判断が求められるようになっている。各校は授業のオンライン化にとどまらず、体育や合唱など比較的感染リスクが高い活動も警戒を強めながら継続してきた。

「形を変えても学びを止めないように試行錯誤を繰り返してきた」。こう振り返る第三日暮里小の末永校長は「卒業式など学校行事は、子供たちの社会性や人格を高めるためにも教育に欠かせない。制限があるなかでも、行事をなくすのではなく、その時々でやり方を工夫して継続していくことが大切だ」と語った。(太田泰)

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