EVの普及を後押しする「超急速充電」は実現するか 鍵を握る冷却技術の最前線

電気自動車(EV)への移行を目指す多くの自動車メーカーは、大容量のバッテリーを搭載して航続距離の長いEVの開発を進めている。だが、大型バッテリーの急速充電には時間がかかり、充電時間を短縮しようと出力を高めると膨大な熱が発生してしまう。そこで鍵を握るのが、バッテリーやケーブルなどの冷却技術の開発だ。

パデュー大学機械工学科教授のイッサム・ムダワルは、37年にわたり熱にまつわる重要な問題の解決に取り組んできた。こうした研究に取り組む人たちの多くが、同じ道をたどることになる。スーパーコンピューターや戦闘機用の新型アビオニクス(航空機用の電子機器)を開発しようとする人は、誰もがどこかの時点で「熱の問題」に直面するのだ。

何兆個ものトランジスターが詰め込まれた最新の電子機器は、途方もない熱を発生させてしまう。そこで未来を夢見る研究者たちは、熱の管理を研究しているムダワルのもとを訪れる。「冷却について考えるのはいつも後回しのようです」と、ムダワルは話す。

いまから数年前、ムダワルはフォードから“地味”な問題への対処法についての相談を受けた。それは電気自動車(EV)の充電ケーブルが発する熱の問題である。

ほかの自動車メーカーと同じくフォードも、素早く充電できるEVの開発を競っている。しかし、問題は充電のために電子を速く動かそうとすると熱が発生することだ。

例えば、5分でEVを上限まで充電する場合、電気抵抗によってより多くの電流が妨げられるので、バッテリーの内部と外部に熱に関する問題が起きる。特にケーブルは熱に対処する上でのボトルネックになるのだ。

とはいえ、ムダワルが取り組んでいる問題は現実にはまだ発生してない。米エネルギー省(DOE)は10分以内に200マイル(約320km)の航続距離分の電力を充電できることを「超急速充電」と定義した。これは既存の充電ステーションや充電ケーブルでも実現できそうな目標だが、バッテリーの性能はもっと高める必要がある。

その理由のひとつは、バッテリーも熱の問題に対処しなければならないからだ。ムダワルの研究が目指すのは、自動車の充電がガソリンを入れることと同じくらい便利になる未来の実現である。

航続距離と急速充電のトレードオフ

近年のEVのトレンドは「大きければ大きいほどいい」というものだ。自動車メーカーは世間の「航続距離不安症」の解消のために航続距離400マイル(約640km)の実現を目標に掲げており、同時に米国で絶大な人気を誇るピックアップトラックの「シボレー・シルバラード」やフォード「F-150」、GMC「ハマー」といった車種のEVを開発している。これらの大型のクルマで膨大な航続距離を実現するには、巨大なバッテリーが必要だ。

当然ながら、その実現にはトレードオフがある。大型バッテリーを充電するには時間がかかるのだ。

高速道路に設置された最新の充電設備を使えば30~40分でフル充電が可能である。DOEによると、高速道路の充電設備での充電はEVの充電の5%を占める。とはいえ、こうしたEVのほとんどは、ドライバーが自宅の電源でひと晩かけて巨大なバッテリーを充電することを想定して設計されたものだ。

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