<独自>日本有事にミサイル避難先足りず、地下施設指定わずか2・4%

日本が弾道ミサイル攻撃を受けたことを想定し、自治体が指定する全国約5万カ所の緊急一時避難施設のうち、人的被害の抑制に最も有効な「地下施設」の割合が、昨年4月時点で2・4%にとどまることが19日、分かった。中国の軍事力増強や相次ぐ北朝鮮のミサイル発射など、日本を取り巻く安全保障環境が緊迫の度合いを高めている現実を踏まえ、国は令和7年度末までの5年間で地下施設の指定数を増やす方針だが、施設の場所自体が周知されておらず、有事の際に機能するかどうかは未知数だ。

2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵攻では、軍事拠点だけでなく市街地の民間施設もミサイル攻撃を受け、現地からは首都キエフの地下鉄駅にシェルター代わりに殺到する市民や、空爆された南東部マリウポリの劇場地下のシェルターに避難する住民らの様子が報じられている。

日本周辺でも近年、北朝鮮による弾道ミサイルの発射実験が続いており、被害が予想された場合、自衛隊は海上と地上の双方から迎撃する構えだが、元自衛隊幹部は「同時に複数発射されると、全て撃ち落とすことは困難。民間への被害も避けられない」と明かす。

脅威の高まりを背景に、国民保護法に基づいて都道府県などは、避難先となる5万1994カ所(昨年4月時点)を緊急一時避難施設に指定している。

場所は内閣官房の「国民保護ポータルサイト」で公表しているが、その多くはコンクリート造りの地上構造物。内閣官房によると、爆風や熱線からの被害抑制に最も有効な地下施設の割合は約2・4%(1278カ所)にすぎない。

国は今年度から令和7年度末まで5年間を集中取組期間と規定し、地下施設の指定先を増やす方針を示している。現在の指定先は公立機関がほとんどで、国は民間の地下街なども活用したい考えだが、内閣官房の担当者は「あまり進んでいない」と話す。

陸上自衛隊北部方面総監や東京都危機管理監などを歴任した田辺揮司良(たなべ・きしろう)元陸将は、地下の安全性の高さを強調した上で、指定数の少なさに加えて周知の低さを問題視。「どこに避難施設があるのかを国民が事前に知らなければ避難先として機能しない。まずは場所の周知を徹底しなければならない」と訴えている。(山本考志、土屋宏剛)

緊急一時避難施設

弾道ミサイルが着弾した際の爆風や熱線から命を守るための一時的な避難先で、24時間利用可能な施設もある。北朝鮮と対峙(たいじ)する韓国の住民避難施設を参考に、1人あたりの床面積を約0・825平方メートルと規定。国は令和7年度末までの5年間を集中取組期間と定め、地下施設の拡充を自治体側に求めているが、具体的な数値目標は定めていない。

国民保護法

他国から武力攻撃を受けた際に国民の生命や身体、財産を保護するため、国や自治体の責務を定めた法律。平成16年に成立、施行された。国にはミサイル攻撃などに関する情報発信や警報の発令を義務付け、各都道府県知事と政令指定都市の市長には弾道ミサイルの爆風などから住民の被害を抑えるための避難先を、施設管理者の同意を得た上で緊急一時避難施設として指定するよう求めている。

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