日印首脳会談 岸田首相、対露インドつなぎ留め

【ニューデリー=永原慎吾】インドのモディ首相との会談に臨んだ岸田文雄首相の狙いは、ウクライナに侵攻したロシアへの非難を避けているインドを日本や米国などとの協調路線につなぎ留めることだ。インドが対露融和に傾き過ぎれば、中国抑止を念頭にした日米豪印4カ国(クアッド)の結束にも不協和音を生じさせかねない。今年前半には東京でクアッドの首脳会合を開催する予定で、首相は連携の維持に力を尽くす考えだ。

「世界は国際秩序の根幹を揺るがす事態に直面している。民主主義や法の支配といった基本的な価値を共有する日本とインドが2国間や日米豪印を通じ、連携していく重要性は増している」

首相は19日、会談後の共同記者発表で強調した。

インドは旧ソ連時代から武器輸入などを通じてロシアと密接な関係を築いてきた。ウクライナ侵攻後もロシアに融和的な姿勢を隠していない。2月の国連安全保障理事会では対露非難決議に中国などとともに棄権した。米国が露産原油の輸入禁止に踏み切る中、インドは露産原油の購入を検討しているとされる。

それでも首相は周囲に「インドは重要なクアッドの一角だ」と語り、モディ氏との対面での会談に意欲を示してきた。ウクライナ侵攻後、日米欧の先進7カ国(G7)が構築してきた「対露包囲網」でインドが重要であるだけでなく、中国に対抗するにはクアッドの結束が不可欠だからだ。

日本にとって最も危惧されるのは、ロシアと同じ権威主義国家である中国が台湾や尖閣諸島(沖縄県石垣市)で武力行使に踏み切ることだ。インドは中国と国境付近で緊張状態が続くほか、中国とパキスタンの接近にも警戒を強めている。日印両国が対露で足並みをそろえるのは難しいが、対中では連携の余地がある。

外務省幹部は「日本と話をしてインドのロシアに対する立場がひっくり返ることはありえない。前向きな対応を少しでも引き出せればいい」と語っていた。

日本は安倍晋三元首相の時代から首脳間の相互往来を続け、インドと独自の信頼関係を構築してきた。首相周辺は「米国も同じアジアの日本がインドをつなぎ留める役割を果たしてほしいと思っている」と話す。ロシアのウクライナ侵攻で国際秩序が揺らぎ、クアッドの重要性が高まる中、首相には〝結節点〟としての役割が求められている。

>岸田首相、印モディ首相と会談、ウクライナ情勢協議

会員限定記事会員サービス詳細