ボルボの大型セダンの魅力とは 新型S90試乗記

再上陸したボルボの大型セダン「S90」に小川フミオが試乗した。

光るS90の存在感

プレミアムセダンというのは、“品”のある乗りものだ。たとえばスウェーデンのボルボ。全長4970mmの余裕あるサイズのボディをもったS90をラインナップの頂点に持っている。2021年9月に導入が発表された、このぜいたくなセダンに、2022年3月にようやく乗れた。SUVとはちがう魅力が印象的だ。

モデル名にある「S」は誰でも推測できるとおり、セダンを意味する。対するステーションワゴンの「V」はバサタリティ。多様性を意味する英単語の頭文字から名づけられている。SUV全盛の世のなかにあって、セダンってどうなの? という声もあがりそうだけど、S90、じつはいい。セダンならではの特徴をちゃんとそなえている。

落ち着きと、適度なスポーティさをバランスさせたスタイリングは、セダン好きに強くアピールしそうだ。たとえば、レクサスがけっこうアグレッシブな方向へと進んでいるなかで、S90ならではの存在感が強く出てきているのでは。そう思いませんか?

日本に導入されるのはボルボ「S90 B6 AWDインスクリプション」。220kW(300ps)の最高出力と、420Nmの最大トルクをもった1968cc直列4気筒ガソリンターボ・エンジンと、全輪駆動システムの組合せ。かつ、ぜいたくな仕上げの内装と豊富な装備を持つ。

このエンジンには小型電気モーターが組み合わされる。いわゆるマイルド・ハイブリッド・システムだ。ボルボでは「48V(ボルト)ハイブリッド」と呼ぶ。発進時や加速時、ギアのシフトアップによって一瞬トルクが落ち込んだとき、モーターがエンジンの出力軸をまわして力を足す。

セダンならではの良さ

乗った印象は、余裕あるサイズの室内と、しっとりした乗り心地は、大型セダンならでは。いっぽう、軽快な加速感と、ステアリング・ホイールを切ったときの身のこなしは、ふたまわりぐらいコンパクトなクルマのように思えた。

発進時も、高速道路での加速時も、もたもたしないで気持ちよく加速するのは、今回のマイルド・ハイブリッド・システムの恩恵だろう。昨今のボルボ車では、内燃機関(ガソリンエンジン)搭載のすべてのモデルに搭載されている。S90も、おかげで、どんな道でもまことに気分よく走れるのだ。

S90は、ドライバー席もいいし、座面がやや低めで独特のポジションで乗る後席もなかなかよい場所だ。試乗車は、ミルクキャラメルのようなソフトな色調のレザーシートを備えていて、内装を大きなセリングポイントにしてきたボルボならではの、落ち着いた雰囲気が、私にはたいへん好ましかった。

SUVに対するセダンのよさとは、快適性と大きく関連している。ひとつは、乗り心地。車高を上げていないぶん、サスペンションアームの動きの自由度が大きくとれるので、乗員は揺さぶられず、かつ路面からの突き上げをていねいに吸収してくれている。

もうひとつのよさは、遮音性。キャビンが比較的コンパクトで、密閉空間化できるためだ。じっさいにS90は、グリップのよいミシュランタイヤの起こすノイズは聞こえてしまうけれど、風切り音などはまったく気にならない。エアコンの効きも、ステーションワゴンや大型SUVより効率的なはずである。

「CleanZoneアドバンストエアクオリティーシステム」が乗員のために用意されているのも、ボルボらしい。PM2.5のセンサーをもち、車内自動換気機能で、つねに環境をクリーンに保ってくれるのだそう。車内が快適なのは、たいへん大きなアドバンテージだ。

価値ある894万円

ボルボは、1980年代から1990年代にかけてステーションワゴンで人気を博し、そののちSUVが看板車種になった感がある。でも元来は、セダンが得意なメーカーで、1960年代の100シリーズやその後の200シリーズ(日本では240が人気だった)をはじめ、700シリーズ、800シリーズ、ぜいたくな900シリーズと、印象的なモデルをいろいろと作りだしてきた。

昨今、比較的若い年齢層で、240セダンに乗るひとを私は見かける機会が少なくない。新車当時は古くさいと思ったものの(笑)、いま見ると、個性がある。ボディのバランスがいいし、よけいな装飾が廃されているせいで、古びて見えにくいのだろう。

今回のS90を眺めていても、デザイン性が高いなぁと私は感じる。ルーフのラインがそのままテールエンドにまでスムーズにつながってゆくような、伸びやかな輪郭が実現されているからだ。

フロントは薄めのヘッドランプ、いっぽうリアはコの字型のリアコンビネーションランプで、ボルボ一族のデザインアイデンティティをかもしだしつつ、適度なスポーティさを感じさせる。最後は生きた化石のようだった当時の200シリーズとはまったく異なり、あたらしい時代のセダンとして評価できる。

価格は894万円。日本では、受注生産による販売という。そんな控えめにならなくても、見るひとはちゃんと見てくれる、と思うよ。私はボルボにそう言いたい。

文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.)

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