北ミサイル着弾まで10分弱…進まぬ避難指定、政治・経済中枢に被害も

着弾まで10分弱-。北朝鮮から発射された弾道ミサイルが、日本に到達するまでの時間はごくわずかしかない。政治や経済の中枢への被害も想定される中、避難手順の整備ははかどっておらず、昨年4月までに指定された地下避難施設も東京23区内で141カ所、大阪市内では4カ所にとどまる。課題山積の危機対応をめぐり、過去の地震災害で得た教訓を有事にも生かそうと、独自に動き出した自治体もある。

ロシアによるウクライナ侵攻直前の2月14日、首都キエフの市当局はミサイル攻撃に備え、3千平方メートルの地下の核シェルターを開放する考えを明らかにした。

西側諸国との核戦争が現実味を帯びていた旧ソ連時代、首都被害の抑制を目的に建設された施設。日本でも都心部がミサイル攻撃を受けた事態を想定し、地下の緊急一時避難施設の指定が進むが、数は少ない。

内閣官房によると、昨年4月までに自治体が指定した地下施設は、人口966万人の東京23区内に141カ所。皇居や首相官邸、大企業の本社などが集中する千代田区に限ると12カ所で、270万人余りが暮らす大阪市はわずか4カ所だ。

国は自治体側に対し、地下の駅コンコースや地下街などにも指定の網を広げるよう求めているが、こうした民間への協力要請は滞りがちだ。

東京都総合防災部の担当者は「地下街では管理者が複数にまたがるケースが多いため、一度に全ての同意を得るのは難しく、時間がかかる」と理由を説明する。

指定を受けた地下施設の多くは、指定作業が比較的容易な学校など公共機関の地下スペースで、周辺人口のごく一部しか収容できない。そうした現状を改善するため、神戸市は今年2月、全国で初めて民間と連携し、市内の地下駅舎や地下街など47カ所の計約21万平方メートルを緊急一時避難施設に指定した。市人口の約17%に当たる25万4830人を収容できる。

有事の際の緊急一時避難施設に指定された神戸・三宮の地下街=神戸市中央区
有事の際の緊急一時避難施設に指定された神戸・三宮の地下街=神戸市中央区

平成7年に阪神大震災を経験した同市は「災害への備え」を最重要課題の一つに掲げており、危機管理室の担当者は「震災で得た教訓を有事対応にも適用した」と話す。

ただ国は、地下施設の指定拡充は図る一方で、避難手順や訓練について定めたマニュアルはおろか、避難場所であることを示す案内板の設置基準すら設けていない。内閣官房の担当者はそれらの必要性は認めつつも「指定作業を進めることが先決だ」と述べるにとどめる。

ある省庁の幹部は、民間への協力要請やマニュアルの策定がなかなか進まない理由をこう説明する。

「地震などの自然災害と比較すると、ミサイル着弾への備えを求める国民の声は大きいとはいえない。戦争準備だとして拒否反応を示す人もおり、多くの国民がミサイルを現実的な脅威ととらえなければ、国が本気で対策を進めることはできない」

<独自>日本有事にミサイル避難先足りず、地下施設指定わずか2・4%

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