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『包帯クラブ ルック・アット・ミー!』 前作から16年、著者の思い結実

『包帯クラブ ルック・アット・ミー!』天童荒太著
『包帯クラブ ルック・アット・ミー!』天童荒太著

『包帯クラブ ルック・アット・ミー!』天童荒太著(筑摩書房・1760円)

16年前、10代のための新書レーベル、ちくまプリマー新書から本書の前作『包帯クラブ』が誕生しました。

主人公は、北関東のはずれの町の6人の高校生たち。彼らはそれぞれ人には言えない傷を抱えています。ある日、そのうちの一人、ディノが、傷ついた場所に包帯を巻くというアイデアを思いつき、たなびく包帯に気持ちが癒やされていくのを感じた彼らは、そのアイデアを実現する「包帯クラブ」を結成します。この作品では結成直後の「包帯クラブ」の活動を伝えていますが、今作ではその後の彼らと、大人になった彼らの活躍が交差して描かれます。

前作で、著者の天童さんは、作品の横(平面)軸に何倍もの広さと縦(時間)軸にも何倍もの厚さの、しかも緻密で論理的な舞台の地図があるとお話ししていました。前作にちらと登場する未来が、今作でしっかりつながって描かれるのはそれゆえです。

16年の間に現実には、東日本大震災があり、多くのテロ事件があり、コロナがあり、と社会も人の意識も大きく変わったように思いますが、天童さんが「包帯クラブ」に込めたメッセージは全く変わっていないどころか、今日性を帯びて読み手に迫ってくることに驚かされます。

「自分はここにいる、と世界に向かって言えばいい。あなたの声は聞こえているよ」。初期作品から抱いている著者の祈りにも似た、その思いが時を経たからこそ際立つ作品になって結実したと感じています。

(筑摩書房編集部 吉澤麻衣子)

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