日本初の公共ホール専属声楽家集団として発足した滋賀県立びわ湖ホール(大津市)の「びわ湖ホール声楽アンサンブル」の定期公演が3月末、同ホールや県立文化産業交流会館(同県米原市)で開かれる。公演のメインとなる演目はフランスの作曲家、フォーレの「レクイエム」。タクトを振る園田隆一郎氏は「声楽アンサンブルとひとつの音楽を作り上げることが楽しみ。この曲の新しい魅力を発見したい」と意気込む。
♪「育ててもらった」
園田氏はイタリアの歌劇場など国内外で活躍している気鋭の指揮者。びわ湖ホールでは「魔笛」を指揮して以来、10年以上にわたり、さまざまな公演で舞台に立つ。昨年10月にはプッチーニの隠れた名作「つばめ」を指揮し、好評を博した。
「びわ湖ホールに育ててもらった」と話す園田氏。「まだ30代で、アンサンブルのメンバーやホールのスタッフも年上だった。いつの間にか現役のメンバーが一回りくらい年下になり、感慨深い」と振り返る。
現在、声楽アンサンブルのメンバーは14人。全国から厳しいオーディションを経て選ばれた若手歌手が日々、ジャンルを問わず、さまざまな作品に挑戦している。
♪16人で歌い上げる
そんな彼らが今回挑戦するのは、モーツァルトやヴェルディと並ぶ「三大レクイエム」と称されているフォーレのレクイエム。レクイエムは死者のためのミサ曲で、園田氏は「声楽アンサンブルの『若々しさ』だけでなく、大人っぽく、成熟した部分を音楽として引き出したい」と話す。
オーケストラの演奏のもと、何十人もの大合唱で披露されることの多い曲だが、今回はオルガンと弦楽五重奏の室内楽のスタイルにアレンジし、声楽アンサンブルのメンバーと卒業生計16人で歌い上げる。
「多いときは100人規模で歌うこともあるが、この人数だからこそ、透明感のある響きや細かいニュアンスが出せると思う」と園田氏が解説。「歌詞には死ぬことへの恐怖や必死に助けを求めている様子が表れている。人間らしさや生々しさが出せるよう、表現を深めていきたい」と強調する。
♪各国の曲楽しんで
「声楽アンサンブルの魅力を最大限に引き出すプログラムとなっている」
こう胸を張る園田氏。レクイエムの前にはオーケストラ曲を混声合唱に編曲した演目を用意し、1曲目には「動きがある華やかでにぎやかな曲」というヴィラ=ロボスの「ブラジル風バッハ第9番」を選曲。「変拍子で複雑なリズムが絡みあって難しい曲だが、ここでは彼らの若々しい面を出したい」と話す。
今回は自身初となる米原でも公演が開かれる。「行けるところにはどんどん行って、公演をしたい。いろんな国のさまざまな曲を用意したので、楽しんでもらいたい」 (清水更沙)
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公演は26日に同ホール(077・523・7136)、27日に文化産業交流会館(0749・52・5111)。