ポーランド南部 あふれるウクライナ避難民 日本人女性も奮起

17日、ポーランド・クラクフ中央駅に集まる大勢のウクライナ人。ベストを着たボランティアが案内している(三井美奈撮影)
17日、ポーランド・クラクフ中央駅に集まる大勢のウクライナ人。ベストを着たボランティアが案内している(三井美奈撮影)

【クラクフ(ポーランド南部)=三井美奈】ウクライナからの避難民流入の最前線となっているポーランドでは、避難民支援が国民運動の様相を呈している。南部クラクフは市人口の1割を超える避難民が殺到。宿舎の確保が追い付かず、パンク状態となっている。

クラクフ郊外に住むアレクサンデル・レブコフスキーさん(52)は今月初め、ウクライナの首都キエフから逃れた母子を自宅に迎えた。20年前、仕事で知り合った女性(51)で、14歳の長男が一緒。近く、キエフに残っていた19歳の長女も来る。

レブコフスキーさんは、「キエフからの電話で『自宅が砲撃にあった』と聞き、すぐ『うちに来て』と言った。家は広いので3人でも大丈夫」と話す。近所の家庭でも、避難民を受け入れている家が多い。

クラクフでは各所に水色と黄色のウクライナ国旗が掲揚され、スーパーには避難民支援の募金箱が置かれている。タクシーに乗ると運転手は「昨日は避難民を無料で送迎した」という。中央駅前には簡易ベッドを並べた宿泊所が設置され、無料の給食が配られる。

2015年、シリア内戦で欧州に中東の難民・移民が流入した際、ポーランドは欧州連合(EU)が割り当てた受け入れ枠を拒否したが、当時とは全く状況が違う。レブコフスキーさんは「ウクライナ西部は昔、ポーランドの一部だったので文化的に近く、言葉も似ている。まさに隣人の悲劇なので、みんな支援に熱心なのです」と話す。

17日、ボランティア仲間と支援物資の打ち合わせをする吉田さん(中央)=三井美奈撮影
17日、ボランティア仲間と支援物資の打ち合わせをする吉田さん(中央)=三井美奈撮影

クラクフはウクライナ国境の西約200キロ。人口77万人に対し、ウクライナから10万人以上が流入した。簡易宿泊所に収まりきれず、駅構内に雑魚寝する人も目立つ。クラクフ市報道官は地元紙で「これ以上の受け入れは無理。長期的には避難民の学校や就職も必要になる。対応できない」と悲鳴を上げた。

ポーランド国鉄は避難民に長距離列車の無料チケットを発行。移動を支援し、これまでに50万人が利用した。首都ワルシャワなど国内の大都市のほか、隣国ドイツに向かう人が多い。

キエフ北郊から戦火を逃れたテチアナ・ババリキナさん(60)は、娘や孫たち7人で宿泊所に落ち着いた。「キエフでは商店が閉まって水や食料にも事欠き、道路に遺体が転がっている悪夢のような毎日だった。孫は2歳と4歳。今は屋根があるだけでもありがたい」と涙ぐむ。知人を頼って、スイスに向かう計画だと話した。

クラクフでは現地在住の日本人女性が、戦火のウクライナに支援物資を届けている。神奈川県鎌倉市出身の吉田祐美さん(27)で、ポーランド人やウクライナ人の仲間たちと約10人のボランティアを結成した。

吉田さんは、クラクフで日系企業の進出サポートなどを行っている有限会社「ASAGAO」の代表。ロシアのウクライナ侵攻後、「困っている人たちを助けたい」と思っているところ、日本の知人からも「難民たちを支援したい」という申し出があった。そこで今月6日に募金を開始。17日までに、900万円以上が集まった。

調達する物資は、ウクライナで活動するボランティアに需要を聞いて決めている。「ドッグフード、充電器、下着などが多いです」と話す。ボランティアにはウクライナから避難してきた女性もおいる。「防弾チョッキやヘルメットを送りたい」という提案を受けるが、武器関連品は扱わない。支援物資は国境に運び、ウクライナ側の有志グループに輸送を依頼する。これまでに2度発送。今週、3便目を送る予定だ。

吉田さんは、2014年にクラクフの大学に留学。19年にASAGAOを設立した。「ポーランドではウクライナ人への支援運動が広がり、寄付受付所の前が持ち込みの車で渋滞するほど。私も息の長い支援をしたい」と話している。

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