鑑賞眼

舞台「アクダマドライブ」 躍動する肉体表現は必見

舞台「アクダマドライブ」 ©ぴえろ・TooKyoGames/アクダマドライブ製作委員会
舞台「アクダマドライブ」 ©ぴえろ・TooKyoGames/アクダマドライブ製作委員会

舞台の醍醐味(だいごみ)は何かと問われたら、目の前で俳優が自らの肉体を使って生きていること、と答えるだろう。そんな俳優の躍動する肉体表現を、余すことなく楽しめるエンタメ作品が誕生した。

近年、「2・5次元」として多くの漫画やアニメが舞台化されているが、この「アクダマドライブ」も令和2年に放送されたオリジナルアニメが原作。戦争によりカントウの属国となったカンサイで、犯罪者(アクダマ=悪玉)と彼らを追う警察の特殊部隊「処刑課」の戦いを描く。作品特有の難しい用語も出てくるものの、アクダマと処刑課の戦いとその間で揺らぐ正義に軸を据え、初心者にも分かりやすくまとめた。

登場人物が全員、アニメから抜け出てきたようなビジュアルなのにまず驚く。中でもチンピラ(長妻怜央)は特に目を引く。自らもダンサーである演出の植木豪は、作品の世界観を肉体に落とし込むすべにたけており、運び屋役の蒼木陣を始めアクロバットを得意とする俳優、ダンサーがそれに応えた。殺人鬼役の本田礼生は、関節がどこについているのか首をひねりたくなる独特な動きで不気味さを表現。Doltonの驚異の柔軟性、星波(せな)のキレのある動きに代表される処刑課のアクロバティックなダンスは、最高にテンションが上がる。

何より、アクダマとなっても自分が信じる「善」のため突き進む一般人役の黒沢ともよが度胸満点。アニメでも同役の声優を務めた黒沢は、自らの手で生きる場所をつかみ取ろうとする名もなき一般人の強さを全力で伝えてくれる。悪に染まれば染まるほど善に近づいていくという心憎い矛盾に、彼女の〝悪行〟を応援せずにいられない。

アニメに続きテーマソングを担当した浦島坂田船の楽曲は世界観を伝える一助となり、照明や映像も近未来の疾走するイメージにうまくはまっている。欲を言えば、舞台セットにもう一変化ほしい。

運び屋(蒼木陣、左)と一般人(黒沢ともよ) ©ぴえろ・TooKyoGames/アクダマドライブ製作委員会
運び屋(蒼木陣、左)と一般人(黒沢ともよ) ©ぴえろ・TooKyoGames/アクダマドライブ製作委員会

「戦争」という言葉がより実感を伴うようになった今、制作陣にも演者にも戸惑いはあっただろう。政府のプロパガンダであるウサギちゃんとサメくんの啓発番組、暴徒と化した民衆への強硬な取り締まりなど、現代を重ねてドキリとする場面が多くある。

見る人の立場によって、何が悪かは変わっていく。アクダマという言葉をタイトルに、一般人を主役に据えた同作が扱うのは、善と悪、善人と悪人はどう違うのかという根源的な問い。開演前に舞台上に描かれていた「全員悪玉」の意味が、見る前と後でガラリと変わった。

21日まで、東京・品川の品川プリンスホテル ステラボール。問い合わせは、03・6265・3201。大阪公演あり。(道丸摩耶)

公演評「鑑賞眼」は毎週木曜日正午にアップします。

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