【ワシントン=渡辺浩生】米国防総省高官は16日、ウクライナに侵攻を続けるロシア軍の新たな動向について、ウクライナ最大の港湾都市、南部オデッサ周辺への黒海洋上からの砲撃が確認されたことを明らかにした。露軍が戦略的要衝に位置するオデッサ攻略の準備に入った可能性があるとしている。
高官によると、オデッサ周辺の黒海洋上で露海軍の戦車揚陸艦や水上戦闘艦の動きが活発化している。露軍が攻撃を続ける南部ミコライフを経由して、地上部隊がオデッサへ南下する可能性もあるという。露軍は東部マリウポリの包囲も続け南部ヘルソン州も制圧したとしている。要衝のオデッサが制圧されれば、ウクライナが黒海から遮断される危険があるとみられる。
ウクライナメディアによると、露軍はマリウポリで16日、住民が避難していた劇場を空爆した。多数が生き埋めになった可能性がある。英BBCは同市の副市長の話として、劇場内に1千~1200人が避難していたと報じた。17日、生存者の救出作業が始まった。
首都キエフの包囲を狙う露軍地上部隊は、市中心部から北東10~15キロに展開。ウクライナ警察当局は16日、キエフ北方チェルニヒウで、露軍の攻撃でパンを買うため並んでいた13人が死亡したと発表した。
両国の代表団による停戦交渉は17日もオンライン形式で続けられた。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT、電子版)は16日、双方が合意案の作成をめぐり「重要な進展」を遂げたと伝えた。合意案はウクライナが北大西洋条約機構(NATO)加盟を断念する一方で、ロシアが撤兵するなどとする内容。ただ、プーチン露大統領は同日、軍事活動を継続する意向を表明しており、交渉の先行きはなお不透明だ。
一方、先進7カ国(G7)の外相会合が日本時間の17日夜、オンラインで開催された。ウクライナ侵攻を受け、モルドバなど避難民を受け入れている周辺国への支援を強化するため、G7をはじめとする関係国や国際機関で支援グループを立ち上げることで一致した。会合後、林芳正外相が記者団に明らかにした。