社説検証

日本の対ロシア戦略 日経「制裁へ備え十分か」 産経は「サハリン撤退を」

サハリン島の液化天然ガス(LNG)プラントに接岸した日本のLNG運搬船 =2009年2月(ロイター)
サハリン島の液化天然ガス(LNG)プラントに接岸した日本のLNG運搬船 =2009年2月(ロイター)

ウクライナに侵攻したロシアへの最大の打撃が、ロシア経済を支えるエネルギー部門への制裁であることは間違いない。だが、欧州は、天然ガスや石油供給をロシアに大きく依存している。日本も一定程度依存し、領土交渉を視野に、エネルギー部門を含めた経済協力を積極的に進めてきた経緯もある。対露戦略は抜本的に見直さねばならない。

安倍晋三政権が進めた対露経済協力は、領土交渉の進展も得られず、懐疑的な見方が強かった。ウクライナ侵攻開始を受け、産経は即刻の中止を求めた(2月26日付)。クリミア併合後の2016年、日本側の提案で始まった、石油・ガス開発の協力など8項目の「日露協力プラン」は凍結し、萩生田光一経済産業相から「ロシア経済分野協力担当」という無用の職務を外せばいいとした。

朝日(26日付)は「8年前にクリミアが占領された際、安倍政権は制裁を行ったものの、欧米に比べて限定的だった。北方領土交渉を意識してプーチン氏と会談を重ね、経済協力を強く進めた。その腰の定まらぬ措置はG7の足並みの乱れを示すあしき前例だったが、岸田首相は安倍氏の路線を引き継ぐ構えでいる」と危惧を表明しつつ、方向転換を求めた。

日本や米国、欧州連合(EU)などは、国際銀行間通信協会(SWIFT)と呼ばれる国際決済網からロシアの主要銀行を排除することを決めた。米英両国は、ロシア産原油の禁輸に踏み込んだ。だが、ロシアのプーチン大統領に侵略をやめさせるためには、金融・経済制裁を柱とするさらなる圧力強化が必要との見解は、各紙がおおむね共有するものだ。

標的はエネルギー産業であり、焦点の一つは、米欧日の企業が参画した「サハリン1」「サハリン2」という同島での資源開発事業だ。米欧企業は制裁の一環として、撤退を決定し、日本企業も決断を迫られている。産経(3月3日付)は「(撤退は)わが国のエネルギー調達に大きな打撃となるのは確実である。それでも資源確保で不利になるとの理由でロシア事業を続ければ、世界的な対露制裁の結束を崩すことにもなりかねない」と厳しく指摘し、「政府が明確にロシアを非難しながら、その裏で日本企業がロシアから資源調達する身勝手は許されない。国としての覚悟が問われている」と論じた。

一方、日経は「撤退すればすむ話ではない」(2日付)とし、石油禁輸を含めエネルギー分野への制裁強化に慎重姿勢を求める。「エネルギー産業はプーチン大統領の力の源泉である。ウクライナで続く暴虐に圧力をかけるにはそこに切り込むことがやむを得ない。ただし、ロシアへの依存度を考えると、簡単に同調できない国も少なくない。日本もその一つだ」(11日付)とし、制裁強化の前提として、エネルギーの安定確保に万全を期す必要があるとし、代替供給確保での日米欧の連携や中東の産油国への働きかけなどを挙げた。

産経や読売は、制裁強化は米欧でなく、むしろ日本が主導すべきだと訴えるが、それは、ロシアと同じ強権国家である中国の存在を意識してのことだ。「日本は米国の同盟国、民主主義陣営の主要国であるとの強い自覚を持ち、先進7カ国(G7)諸国と足並みをそろえるべきだ。欧州の危機で十分に行動せず、インド太平洋での有事に支援を求めるというご都合主義は国際社会で通用しないことを肝に銘ずべきだ」(2月23日付産経)「ロシアに侵略を断念させ、高い代償を払わせることができるかどうかは、今後の中国の行動にも影響を与えよう」(3月7日付読売)と指摘した。

制裁はもろ刃の剣である。対露制裁に伴うエネルギー価格の高騰は、光熱費や物流費などに波及し、国民生活に影響を及ぼさずにはいられない。政府、企業が最大限の努力で、生活を守り、それによって対露制裁を支えていかねばならない。(内畠嗣雅)

■対ロシア制裁をめぐる主な社説

【産経】

・(サハリン資源事業)日本も撤退の決断を下せ(3月3日付)

・(露機の飛行禁止)首相は決断をためらうな(9日付)

【朝日】

・さらに強化の道を探れ(10日付)

【毎日】

・(米国が原油禁輸)日欧も「脱露」への備えを(13日付)

【読売】

・日本は国際連帯を牽引せよ(7日付)

【日経】

・ロシアから退く石油メジャーの重い決断(2日付)

・エネ制裁は供給安定を前提で(11日付)

【東京】

・生活基盤を支えてこそ(5日付)

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