オミクロン第6波 衰弱する高齢患者 急激に持病悪化 介護現場ケア困難

後藤茂之厚労相
後藤茂之厚労相

18都道府県に適用されている新型コロナウイルス対策の蔓延(まんえん)防止等重点措置は21日をもって全面解除される方針となったが、オミクロン株感染では持病悪化や体力消耗を招き、極度の衰弱で深刻な状況に陥る高齢者が相次いだ。クラスター(感染者集団)が起きた高齢者施設では点滴や酸素の投与を受けながらも入院できず、死期を早めるケースも。往診や訪問介護の現場ではケアの難易度が高い患者も少なくなく、医療機関以外での対応の難しさが突きつけられた。(三宅陽子)

急激に悪化

「入所者への3回目のワクチン接種が終わっていない施設では、次から次に感染者が出てしまう状況だった」。東京都内を中心に訪問診療を行う医療法人社団「悠翔会」(港区)の佐々木淳理事長は高齢者施設の感染連鎖をそう振り返る。

往診先ではコロナ肺炎に至る患者は少なかったものの、持病が急激に悪化するケースが目立ち、飲み込む力が弱くなって誤嚥性(ごえんせい)肺炎を合併したり、食べることができなくなって衰弱したりする患者も多かった。

保健所に入院調整を頼んでも入所者は「施設内でケアの提供が可能」とされ、優先順位を下げられてしまう。一時は施設内で点滴や酸素の投与が必要な患者も抱えた。

佐々木氏は「みとりを控えた方や予後の見通しが厳しい方が感染すると、一気に体調を崩すことがある」と説明。「速やかな入院がかなわず、施設で亡くなった方もいる」と明かす。

ただ入院しても、必ずしも安心とはいえなかった。

治療を終えた高齢患者の身体機能の低下は深刻で、「感染前に普通に食べて動けていた人が入院したことで8キロ近く体重を落とし、(食べ物がうまく飲み込めない)嚥下(えんげ)障害や寝たきりで戻ってくるケースもあった」と佐々木氏。施設では、点滴を受けながら、食事を取るリハビリに励む高齢者の姿もあった。

防護服で介護

こうした中、東京都は、感染した施設利用者らを受け入れる臨時医療施設を旧東京女子医大東医療センター(荒川区)に開設。入院で症状が改善した高齢者の受け入れ先として活用する方針も示し、50床で運用を始めた。現在は対応可能数を60床まで拡大。55床(14日時点)の利用が続く。

一方、高齢者の感染増加は、訪問介護の現場にも重い負担を強いてきた。

サービスの利用者は複数の基礎疾患があるなどケアの難易度が高いことに加え、感染者や濃厚接触者にもかかわらず、認知症や障害のためにマスク着用などの感染防止が困難な人も少なくない。食事、排泄(はいせつ)、入浴などは利用者と近距離で接しなければならず、滞在時間も長くなる。

ヘルパーらは防護服に身を包んで奔走を続けるが、訪問介護には、医療分野で実施される報酬加算の仕組みがない状況だ。

報酬加算求める声

後藤茂之厚生労働相は今月、感染者や濃厚接触者に対応するヘルパーに訪問介護事業所が手当てなどを支給した場合、既存制度を活用して全額公費で補助できるとの考えを表明。都道府県に通知した。補助上限(年間32万円)を超える場合も個別協議で上乗せは可能としたが、事業所からは疑問の声も漏れる。

「でぃぐにてぃ」(新宿区)の吉田真一代表は「現場はコロナ対応ですり減っている状況。実際にどんな手続きが求められることになるのか」と不安視する。

吉田氏は四肢まひの障害で身体介護などを受けながら暮らす。1月には感染した家族の濃厚接触者となり、自宅で17日間の自主隔離する間もヘルパーに助けられたという。

感染リスクに見合った報酬加算の実現を厚労省に要望してきた吉田氏は「懸命に対応を続けるヘルパーらに報いる環境を早急に整えてほしい」と訴えている。

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