ロシアの侵攻が続くウクライナから国外に逃れる避難民が280万人を超えた。ロシア軍が攻撃を広げつつある西部からの避難民も目立つ中、13日だけで11万人以上がウクライナを退避。半数以上が逃れた西隣ポーランドでは受け入れの限界が懸念されている。(ポーランド南部メディカ 板東和正)
バスを待つ長蛇の列
ウクライナ西部に隣接するポーランドの国境の町、メディカ。冷たい風が吹き付ける14日午後、ウクライナから逃れた避難民が寒さに震えながら一時避難所行きのバスに乗るため長蛇の列を作っていた。
「まさか、西部がここまで危険な場所になるとは」
メディカから約70キロ離れたウクライナ西部リビウから避難してきたウクライナ人女性、ハンナ・グラデメリナさん(70)はバスを待ちながら涙を流した。
リビウでは13日、ロシア軍が西方の軍事演習施設「国際平和維持・安全保障センター」をミサイル攻撃。ウクライナ西部への初の大規模な軍事攻撃で少なくとも35人が死亡した。
攻撃された当時、演習施設周辺の自宅にいたグラデメリナさんは「このままではウクライナ全土が空爆される」と危機感を感じ、13日に家族とともに国外に逃れる準備を進めたという。
「リビウ周辺はこれまでほとんど攻撃を受けていなかったが、13日の空爆で状況は一変した。ウクライナの全国民は一刻も早く脱出しようとしている」と語った。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、ロシア軍による侵攻開始以降、ウクライナから国外に280万人以上が逃れた。侵攻が続けば400万人に達するとの見方もある。特に避難民受け入れに積極的なポーランドには170万人以上が流入。ルーマニア(約41万人)やハンガリー(約25万人)などの周辺国に比べ突出している。
戦火で移動困難に
ただ、ポーランドでは、新たな避難民の受け入れが限界に近づいている。
ロイター通信などによると、首都ワルシャワに設置された最大の受け入れ施設は10日時点で約70%が埋まり、ウクライナ避難民は首都の人口の10%超に達した。ポーランド南部クラクフでも10万人以上の避難民が到着し、十分な支援が難しくなっているという。
そうした中、ポーランドのラウ外相は14日、「単独で対処できる国はない」と国際社会に支援を要求。ドゥダ大統領も、米国に家族がいる避難民が滞在できるように米国ビザ(査証)の発給手続きを急ぐよう米政府に求めている。
一方、UNHCRによると、ウクライナ国外に逃れる1日当たりの避難民の数が20万人を上回っていた3月上旬に比べ、流入ペースは落ちた。国内で激戦が続く中、国外への移動が困難になっているとみられる。
14日に国境を越えてメディカに到着したウクライナ人女性のギリナ・ルバンさん(45)は「12時間以上バスで移動したが、いつロシア軍に狙われるか分からず、一睡もできなかった」と明かした。ウクライナ西部への攻撃が強まれば、避難民は行く手を阻まれる恐れがあり、ルバンさんは「今後脱出する人々のためにも戦況は悪化しないでほしい」と訴えた。