「ウクライナ作戦は正当」露が子供に愛国教育 政権への疑念封じる

3日、ロシア・サンクトペテルブルクで、警察に拘束される反戦デモ参加者(左)(タス=共同)
3日、ロシア・サンクトペテルブルクで、警察に拘束される反戦デモ参加者(左)(タス=共同)

ロシア全国の学校で、児童・生徒を対象にウクライナ侵攻を正当化する授業が行われている。露教育省が「愛国教育プログラム」の一つとして製作した「平和の守護者」と題したビデオ教材は、露軍によるウクライナ市民や市街地への攻撃を「フェイク(偽)」だと断じた。ロシアは子供に侵攻の正当性を植え付け、プーチン政権への疑念を抱かせないようにする思惑だ。

約30分間のビデオ「平和の守護者」は、ロシア人歌手の女子児童(12)が国営テレビ司会者に「特別軍事作戦」(ウクライナ侵攻の露側呼称)の意味を尋ねるという内容。ビデオは冒頭、長年にわたりロシアと文化や歴史を共有してきたウクライナでは、2014年の政変で親欧米派勢力が不当に権力を奪取したと主張した。

司会者はその上で、「ウクライナ東部では露系住民がウクライナ軍に殺害され続けてきた」と述べ、住民保護のためにロシアが立ち上がる必要があった-と主張。また、露軍はウクライナの軍事施設のみを攻撃しており、SNS(会員制交流サイト)上で拡散している市街地への攻撃や市民の被害の動画は「フェイク」だと断言した。

さらに「経済制裁はどうなるの?」と尋ねた女子児童に、司会者は「露経済は以前より強くなっている」と述べ、制裁の影響は限定的だと安心させようとする場面もあった。

露経済紙ベドモスチによると、ビデオは今月3日、露全国の学校で、日本の小学6年~高校3年に相当する児童・生徒約500万人が視聴。露経済紙コメルサント(電子版)は11日、その後も学校で「特別軍事作戦」に関する授業が続けられ、教員は「露軍や政府の公式発表以外を信じるべきではない」と教えるよう命じられていると伝えた。

露政府系機関「全ロシア世論調査センター」の世論調査によると、侵攻後、プーチン露大統領の支持率は67%から77%に上昇した。ただ、調査は国民の主要な情報源である国営テレビが侵攻を正当化する大々的な宣伝放送を行い、反戦に対する厳格な言論統制が敷かれた中で行われており、実態をどこまで反映しているかは不透明だ。

ロシアでは反戦デモも続いており、露人権団体によると、これまでに少なくとも約70都市で約1万5千人が拘束された。プーチン政権は反戦機運が政権打倒運動に発展するのを警戒しており、「愛国教育」はそうした芽を摘む戦略の一環でもある。

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