プロスポーツ界に学生インターン浸透 即戦力採用も 変わる採用事情

インターンの学生らも参加し、大阪エヴェッサの試合で応援グッズが配布された(大阪エヴェッサ提供)
インターンの学生らも参加し、大阪エヴェッサの試合で応援グッズが配布された(大阪エヴェッサ提供)

就職活動で主流となってきたインターンシップ(就業体験)。バスケットボール男子Bリーグなどプロスポーツ団体にも、インターンシップの学生を受け入れる動きが広がっている。試合運営などに携わり、熱意や発想力を見込まれてそのまま採用されるケースもある。就職先を増やしたい大学やスポーツを職業にしたい学生にとっては、絶好の機会。プロスポーツ団体にとっても、有望な人材を確保できるメリットがある。長引く新型コロナウイルス禍で、試合運営に必要なスタッフが集まりにくい中、インターンシップの学生は貴重な戦力にもなっている。

大会を支える

Bリーグ、大阪エヴェッサ入社1年目の柴田大輔さん(23)は大阪産業大学4年生のときに、所属していたバスケットボール部監督の紹介で、エヴェッサのインターンシップに参加した。

本拠地、おおきにアリーナ舞洲(大阪市此花区)の試合会場で観客に無料の応援グッズを配ったり、入場券の券面をチェックしたり、ゴミを回収したり…。当初から入社を希望していた柴田さんだが、熱心な働きぶりが評価されて次第に他の業務も頼まれるようになり、就職が決まった。

「高校生のころから、将来はバスケットボールに関係した仕事をしたいと思っていたが、当時は学校の教師になることぐらいしか思いつかなかった」という柴田さんは「試合の運営ボランティアをしてみて、性に合っていると思った。裏方となって試合や大会を支えるのは楽しい。インターンシップを経験し、プロの世界は収益を考えている点が大学生の試合とは異なるし、規模感がまったく違っていた。お客さんを集めるための工夫や、楽しんでもらうための演出も勉強になった」と振り返る。

受け入れ校増

エヴェッサのインターンシップ受け入れ校数は、平成28年度には1校だけだったが次第に増加し、令和3~4年シーズンでは大学、専門学校合わせて15校の学生を受け入れるようになった。直近の昨年10~12月には1試合あたり、多いときには約20人のインターンシップの学生が試合運営に携わった。

学生の役割分担や配置を考えるなどしてきたアリーナ事業部興行課の伊藤智久さん(24)は「試合会場でいろんなアイデアが出てくることがある。インターンシップの学生同士でSNSのコミュニティーをつくってくれ、クラブ側からの連絡がスムーズに行えた」と感謝する。

入社2年目の伊藤さん自身も、エヴェッサでのインターン経験者だ。バスケットボールに関係する仕事に就くことを目指し、エヴェッサのグループ企業が開講する、バスケットボールチームの運営を学ぶ専門学校に入学。授業を受けながら約半年間インターンシップを経験した。

大阪エヴェッサの伊藤智久さん(左)と柴田大輔さん。ともにインターンを経験した=大阪市中央区
大阪エヴェッサの伊藤智久さん(左)と柴田大輔さん。ともにインターンを経験した=大阪市中央区

現在は、Bリーグの中でも屈指のクオリティーを誇るとされる演出などエヴェッサの試合運営を担当している。「お金を使う部署なので、どういう効果を上げられるかも大切。試合が終わった後に、やり切ったという達成感があるのがいいところ」と強調する。

組織の活性化

一方、インターンシップでは試合運営を学んだ柴田さんは現在、スポンサーへの営業を担当。「インターンの体験とは異なる部門だが、商談の相手が会社の社長のこともあり、自分のためにもなる。入社1年目でそういう人たちと会えるのはプロスポーツクラブならでは」とやりがいを感じている。「バスケットボールを野球やサッカーと同じくらいになるまで盛り上げていきたい。エヴェッサでいろんなことを経験し、自分自身も成長していきたい」

社員募集が不定期なうえ、ツテがないと就職が難しいとされたこともあるプロスポーツ業界。インターンシップを積極活用し、人材の多様化と組織の活性化につなげているようだ。

即戦力求め 進む採用

プロスポーツ団体でインターンシップの受け入れが増えていることについて、追手門学院大学社会学部の上田滋夢(じむ)教授は、団体と大学双方のメリットを挙げる。

プロスポーツ団体はインターンの受け入れと合わせて、パートナーシップ協定などを締結する事例もあるといい「新たなスポンサーを獲得するツールにもなっている。一方、大学にとっては、団体との提携が学生募集のアピールになる面もある」と指摘する。

また、近年重視されるようになった、主体的・対話的な学びであるアクティブラーニング(能動的学習)にインターンシップを結び付ける動きが進んだことも後押ししているという。

スポーツ団体側の人材採用基準の変化を指摘する声もある。

スポーツ業界への転職支援なども手がけるスポーツビジネス専用メディア「HALF TIME(ハーフタイム)」の採用コンサルタント、矢田葵さんは、スキル重視の採用に変わってきているとする。

「スタートアップ企業に近い団体も増えており、即戦力が求められている。すると、インターンシップの先に社員採用があるような形が増える傾向にある」と分析する。入社1年目から大きな活躍の場が用意されているともいえ、意欲的な学生をひきつける要因になっている。(北川信行)

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