ビブリオエッセー

旅の鞄にとっておきの一冊 「いろいろ」上白石萌音(NHK出版)

エッセーのよいところは著者と一対一でおしゃべりをしているような感覚になるところと、人と話す気分でないときも「そうそう、そうなの私も!」と共感して、一人じゃないんだなと思えるところにある。

とはいえ芸能人のエッセー集を進んで読んだこともなかったのに萌音さんの本を手に取ったのは、久々で夢中になっている朝ドラ『カムカムエヴリバディ』の影響が大きい。裏話も書いてありファンとしては嬉しい限り。

エッセーは「踊る」「駄弁る」「愚痴る」などと見出しのついたどれも見開き2ページ。印象的だったのは萌音さんが鞄の中に必ず本を一冊入れるという話だ。「どう考えても本を読む暇なんてなさそうな日でも必ず。旅行に行く時は二、三冊、長期滞在なら五冊以上」とある。

私にとっても本は普段も旅の時も必需品だ。旅はどの本をお供にするか、荷物に入れる一番初めに考える。その時間も楽しい。忙しい旅の時は読破が難しかったなんてこともザラにあるが旅の後にまたその本を読むのも、旅の続きをしているようで愉快である。

萌音さんは「読書という行為以前に、『本』そのものが物質として好き」と書き、表紙をめくった先にある「扉」という名前に感激する。いつか書斎を持つのが夢だそうだ。

タイトルの通り女優業や歌の仕事などいろいろな日々を丁寧、かつシンプルに綴っている。「宿る」というエッセーには妊婦さんのシーン撮影での感動を「今は最大限に想像力を働かせて、母親を生きてみる」と書いていた。ほかにも故郷・鹿児島のことやこの本の制作過程などもあり、等身大の萌音さんに親近感が湧いた。さて私も、明日はどの本と出かけようかな。

沖縄県宮古島市 儀間沙耶香(41)

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