書評

『青い雪』麻加朋著 怒濤の展開に身を委ねよ

麻加朋著『青い雪』
麻加朋著『青い雪』

この新人、思い切りが良いぞ。第25回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞した麻加朋『青い雪』は、とにかく怒濤(どとう)の展開で進んでいくジェットコースターのようなミステリーである。細かいことは気にせず流れに身を任せてください、と言わんばかりの豪腕を作者は振るっているのだ。

第一章は柊寿々音(ひいらぎ・すずね)、石田大介、的場秀平と妹の希海(のぞみ)という4人の少年少女が視点人物となって物語が綴(つづ)られる。4人は毎年夏、柊家の居宅と的場家の別荘がある土筆(つくし)町で数日間を過ごす仲だ。しかし、ある悲劇的な出来事によって夏の穏やかなひと時は終わりを告げることになる。

4人の子供たちはそれぞれ特異な家庭環境のもと育っており、なかには家族に対して複雑な思いを抱きながら日々を過ごすものもいる。そうした若者たちの繊細な心情に寄り添うような筆致で第一章は語られているため、序盤はゆったりとした印象を持つはずだ。ところが第二章に入ると急なギアチェンジを見せる。きっかけは悲劇から数年後、ある登場人物の元に一通の奇妙な告発状が届けられていた事実が発覚したことだ。ここから物語は急発進したF1マシンのように動き、猛スピードであらゆる事態が進行していく。

作品内で流れる歳月は長いが、読んでいる最中はその長さを微塵(みじん)も感じさせない。登場人物同士の関係も錯綜(さくそう)しているのだが、そこも読み進める内に気にならなくなってくる。頁(ぺーじ)を捲(めく)るごとに新たな事実が判明し、次々と形を変えていく物語を把握することに読者は必死になるためだ。特に第三章以降はあまりにも目まぐるしい展開が続くため、詰め込み過ぎの感が無きにしも非ず。だが、そのおかげで物語が停滞する部分は皆無だ。一気呵成(いっきかせい)に読ませることへ力を注いだ点は好感が持てる。

題名の「青い雪」とは、本書のプロローグに出てくる言葉だ。冒頭、雪が降る中でひとりの女性がその言葉を呟(つぶや)きながら息を引き取る場面が描かれる。女性の死と4人の少年少女の物語は、どのようなつながりを持つのか。その謎をめぐってもまた、意外な展開のつるべ打ちで読ませる。この勢いの良さ、今後も麻加朋という作家の武器になるはずだ。(光文社・1870円)

評・若林踏(書評家)

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