参院選前に前例ない危機 首相、対処誤れば窮地に

自民党大会の終盤で歓談する岸田文雄首相と茂木敏充幹事長(左)=13日午前、東京都港区(矢島康弘撮影)
自民党大会の終盤で歓談する岸田文雄首相と茂木敏充幹事長(左)=13日午前、東京都港区(矢島康弘撮影)

岸田文雄首相にとって夏の参院選は長期政権への道を開く重要な選挙だ。昨年10月の衆院選で勝利し、勢いに乗った首相だが、今年2月のロシアによるウクライナへの軍事進攻で事態は一変した。国際情勢は一気に緊迫化し、侵攻に伴う世界的な物価上昇で経済への打撃は深刻だ。新型コロナウイルスの感染状況は一進一退を繰り返し、専門家の間では「第7波」への懸念も出ている。前例のない危機への対処を誤れば、参院選を前に首相が窮地に陥る可能性もある。

ロシアのウクライナ侵攻で、参院選まで安全運転でしのぐという首相のシナリオは完全に吹き飛んだ。

侵攻による混乱でガソリンや光熱費、食品などが値上がりし、参院選前に家計への負担が増すのは必至だ。新型コロナ禍からの景気回復を見込み、一部企業にみられる賃上げの気配が打ち消されれば、首相の看板政策「成長と分配」は揺らぐ。参院選は衆院選のような政権選択選挙ではないため「政権への不満が反映されやすい」(自民重鎮)のも不安材料だ。

一方、首相の外交姿勢に対し、党内保守系を中心に不満がくすぶる。「佐渡島の金山」(新潟県)を世界文化遺産候補として国連教育科学文化機関(ユネスコ)へ登録推薦する方針をめぐり、首相は一時推薦見送りで調整したが党内の猛反発を受けて撤回した。国際社会が中国の人権侵害を問題視する中、北京冬季五輪に政府代表を派遣しない「外交的ボイコット」の表明は欧米より遅れた。

ロシアのウクライナへの軍事進攻が、中国による台湾や尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺での軍事的挑発行動に波及するとの懸念は強まっている。党内で米国の核兵器を自国領土内に配備し共同運用する「核共有(ニュークリア・シェアリング)」の議論が活発化しているのも防衛力への危機感の表れだ。首相は13日の自民党大会で「ロシアの暴挙をわがこととして捉え、対応する」として日米同盟強化など防衛体制の見直しを急ぐ考えを示したが、「正真正銘の有事に首相は対応できるのか」(閣僚経験者)との声は根強い。

首相はウクライナ情勢に「展開次第では戦後最大の危機に陥る」と強い危機感を示している。エネルギーの大半を外国に依存する日本は、対露政策で先進7カ国(G7)と足並みをそろえつつ、国益を守る厳しいかじ取りが続く。首相は13日の党大会で「国際社会の変動を含め、いかなる事態が起きても国民生活を守り抜く」と表明した。政権発足以来最大の正念場に直面する首相だが、裏を返せば、リーダーシップを発揮しこの難局を乗り越えれば、求心力は高まり、党勢拡大に苦戦する野党を突き放す好機でもある。

平成21年と24年の直近2回の政権交代は、その前に行われた参院選の与党敗北が引き金となった。令和4年2月の長崎知事選、13日投開票の石川県知事選は保守分裂となり、4月には参院石川選挙区の補選を控える。地方選挙で党組織にしこりを残せば参院選全体の情勢に影響しかねない。公明との選挙協力のあり方など連立政権の基盤固めも急務だ。(小川真由美)

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