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マーケティングライター、牛窪恵 『おばあちゃんと福ちゃん』 「幸せ」について考える

『おばあちゃんと福ちゃん』
『おばあちゃんと福ちゃん』

『おばあちゃんと福ちゃん』YASUTO著(宝島社・1430円)

新型コロナウイルスは、私たちに「当たり前と思っていた日常が、どれほどありがたいものだったか」を、改めて痛感させた。同時に、風に揺れるひまわりや紅葉のじゅうたんなど、日本の四季の風景に、感動を覚える人も増えたように思う。

本書は、まさに「おばあちゃんと福ちゃん(愛犬の柴犬)」の何気ない日常を、移ろいゆく季節の繊細な表情とともに写した写真集である。カラフルで素朴、そしてどこか懐かしい瞬間の数々は、大きく引き伸ばして部屋に飾りたいほど美しい。

著名なプロカメラマンの作品かと見まごうが、撮影したYASUTOさんの本業は、サラリーマン。本書の主役「おばあちゃん」の孫で、亡き祖父の形見のレンズを使い、休日に祖母とその愛犬を撮り始めたのがきっかけだという。彼がSNSにアップした画像は「泣ける」「心が温まる」などと話題になり、ツイッターのフォロワーは6万人を超えた(2月末現在)。

最も多いのは、豊かな自然をバックに、おばあちゃんと福ちゃんが、えも言われぬ表情で見つめ合う写真。よく見ると、その手元や首元には、それぞれの風景にとけ込むような色合いの手提げ袋やスカーフ(バンダナ)が見て取れる。

「これらの小物は、もしかするとおばあちゃんの〝手作り〟かもしれない」。中ほどまでページをめくって、そう気づく。福ちゃんに見守られながら、古い足踏みミシンを踏むおばあちゃんが登場するからだ。

高度成長期からバブル期には、大量生産・大量消費が良しとされる向きもあった。だが、コロナ禍を経た今、昔ながらの手作りや古い物を大切に使い続ける価値もまた、見直されている。

今春は満開の桜の下、おばあちゃんの笑顔を眺めながら、「幸せ」について、ぼんやり考えてみてほしい。

『Unlearn(アンラーン) 人生100年時代の新しい「学び」』柳川範之、為末大著 (日経BP・1760円)

アンラーンとは、それまでの人生で身に付いた「思考のクセ」を捨てること。これにより、過去の蓄積を最大限生かせるような、新たな成長に近づけるという。「40歳定年制」の提唱者、東京大学大学院の柳川範之教授と元陸上競技選手の為末大さんが、ビジネスとスポーツ、それぞれの領域でアンラーンの技法を示す点もユニークだ。

牛窪恵さん
牛窪恵さん

うしくぼ・めぐみ>昭和43年、東京生まれ。出版社を経て平成13年に独立。著作を通じて「おひとり様」や「草食系」を広めた。立教大学大学院客員教授。


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