露の「保証」要求で一時中断 イラン核協議

昨年11月、ウィーンで開かれたイラン核合意の修復をめぐる当事国協議に臨むイランの代表団(ロイター)
昨年11月、ウィーンで開かれたイラン核合意の修復をめぐる当事国協議に臨むイランの代表団(ロイター)

【カイロ=佐藤貴生】イラン核合意の再建を目指す関係国の協議が妥結を目前に足踏みしている。ウクライナに侵攻したロシアが、米欧の発動した対露制裁に関係なく、核合意再建後にイランと取引ができる保証を求めたからだ。ロシアの新たな要求をふまえ、仲介役である欧州連合(EU)のボレル外交安全保障上級代表は11日、「外的要因」のため協議を一時中断する方針を示した。再開の時期は未定で、核合意の再建を危ぶむ見方も出ている。

ラブロフ露外相は5日、ウクライナ侵攻後に米欧が対露制裁を発動してイラン核合意の再建をめぐる協議の環境が変わったとし、ロシアが協議で妥結するにはイランとの貿易や投資、軍事技術などの協力に関する権利を書面で保証することが必要だと主張した。

米国務省高官は、ロシアは核合意当事国の立場を利用して「特別な利益」を得る狙いだと批判。ロシアと親密な関係にあるイランでも一時、「国益に打撃を与える」(アブドラヒアン外相)と懸念する声が出た。

米国は2018年、核合意を離脱して対イラン制裁を再開。反発したイランは合意を逸脱する核開発を推進し、核爆弾1個分の濃縮ウラン製造に必要な「ブレークアウト・タイム」は数週間程度まで縮まったとみられ、核合意再建は喫緊の課題となっていた。

イランは低迷する経済の立て直しのため、原油の禁輸を含む米国の制裁解除を要求し、昨年4月にEUの仲介で米国と間接協議を始めた。核開発の制限を求める米国との間で長く隔たりが埋まらなかったが、ここにきて協議が進展し、最終合意文書も完成に近づいていた。

米国はロシアのウクライナ侵攻でエネルギー価格が急騰したため、反米のベネズエラに制裁を解除する見返りに原油を増産するよう働きかけている。イランに関しても核合意再建にメドをつけて原油の禁輸を解除し、市場の安定を図る狙いがあるとみられる。

米外交誌フォーリン・ポリシーは11日、産油国ロシアがイラン原油の輸出解禁を封じるために新たな要求を突きつけたとしている。また、米紙ニューヨーク・タイムズは同日、ロシアの要求は米欧の対露制裁を緩和させる「カード」だという見方を示すなど、ロシアの意図をめぐってさまざまな観測が飛んでいる。

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