「生きる意味考えて」 大川小訴訟、映画制作進む

映画「『生きる』大川小学校津波裁判を闘った人たち」の一場面。同小の廊下に残されたネームプレートをなでて、我が子の存在を確かめる遺族(ⓒPAONETWORK)
映画「『生きる』大川小学校津波裁判を闘った人たち」の一場面。同小の廊下に残されたネームプレートをなでて、我が子の存在を確かめる遺族(ⓒPAONETWORK)

東日本大震災の津波で宮城県石巻市立大川小の児童74人と教職員10人が犠牲になった被害の責任を問い、裁判で勝訴した遺族の思いを追ったドキュメンタリー映画「『生きる』大川小学校津波裁判を闘った人たち」の制作が、4月の完成と年内の劇場公開を目指して進められている。監督の寺田和弘さん(50)は「事実関係をきちんと知ってもらい、大川小の問題を考えるきっかけの一つになってほしい」としている。

大川小をめぐっては、児童の遺族が市と県を相手取った訴訟で、学校の防災対策の不備などの過失を認めて市と県に賠償を命じた仙台高裁判決が令和元年に確定している。

寺田さんは、東京の映像制作会社「パオネットワーク」のディレクター。遺族側の訴訟代理人を務めた知り合いの弁護士から「裁判の教訓や遺族の思いを社会に伝えたい」との相談を受け、昨年1月に撮影を始めた。制作資金はインターネットを使ったクラウドファンディングで募り、全国の317人から約460万円が寄せられた。

映画は遺族が撮影した記録映像を軸に展開し、被災後に市教育委員会が開いた保護者説明会や第三者検証委員会、判決時の記者会見の様子、遺族へのインタビューなどで構成。学校や行政への遺族の怒りや埋まらない溝がありのままに描き出されている。寺田さんは「公共・公益性があり、そのまま伝えることで事実関係を正しく理解してもらえると判断した」と説明する。

当時5年生だった紫桃千聖(しとう・ちさと)さんを亡くし、訴訟の原告団の一人となった父の隆洋さん(57)は編集中の映画を見て「娘と一緒だった11年間と、亡くなってから必死に生きてきた11年間の生活が思い起こされた」という。映画の公開で「最善を尽くさないと命は助からないのに、対策の甘さから多くの子供が学校で亡くなった現実をそのまま見てもらい、自分たちの子供の命について考えてほしい」と訴える。

ただ、映画館側の反応は芳しくない。「震災関連の映画が興行として成り立つか悩ましい」といった理由などから難色を示す劇場もあり、上映館は決まっていない。

5月初めには石巻市で完成作品の試写会を開き、制作資金の提供者や遺族を含む市民らに見てもらう予定だ。寺田さんは「生きていたかった子供たちの(失われた)人生の分まで、遺族がどう生きていくのかという思いをタイトルにした。生きることの意味を考えてほしい」と話している。(村山雅弥)

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