国際圧力でロシア経済が大混乱 侵攻の代償重く

SWIFTのロゴ(手前)とロシア国旗=ボスニア・ヘルツェゴビナ(ロイター=共同)
SWIFTのロゴ(手前)とロシア国旗=ボスニア・ヘルツェゴビナ(ロイター=共同)

ウクライナ侵攻後、ロシアの経済混迷が加速している。多数の外国企業がロシアからの撤退を表明し、通貨ルーブルの下落も歯止めがかからない。プーチン政権は国民の不満が自身に向かうのを警戒し、国際社会からの圧力緩和に躍起だが、どれも弥縫(びほう)策の感が強い。

先行き不安と侵攻への非難を背景に、外国企業が続々とロシアからの撤退や事業停止を表明。その数は200社以上とされる。業種も資源や小売り、飲食、自動車、金融、IT、娯楽など多岐にわたり、失業者が多数出るとの指摘が出ている。

外国為替市場でルーブルは侵攻前から対ドルで40~50%下落。「国際銀行間通信協会(SWIFT)」からの排除などで、露経済の先行きが極めて不透明になったためだ。

露中央銀行は制裁で外貨準備6300億ドル(約73兆円)の約6割を凍結され、為替介入によるルーブルの買い支えは困難だ。通貨安を食い止めるため、露中銀は9日、国内でルーブルから外貨への両替を禁じたほか、外貨建て銀行口座からの引き出しを9月まで最大1万ドルに制限する措置を発表した。1万ドルを超えた場合、顧客はルーブルでの引き出ししか認められない。

ロシアはこれ以前にも、出国者が持ち出せる外貨を最大1万ドルに制限▽輸出企業の外貨収益の80%を強制的にルーブルに転換▽外貨建て債務のルーブルでの返済の容認-など、なりふり構わない経済防衛策を導入してきた。しかし、ルーブルの信用低下という根本問題は手付かずで、通貨安は今後も進むとみられる。

首都モスクワでは現時点で、目立つほどの商品の品薄や物価上昇は起きていない。しかし、一部店舗は既に砂糖や植物油、缶詰などの購入制限を実施。今後、原料や在庫の減少でインフレが加速する見通しだ。

露政府にとって歳入の3~4割を占める〝屋台骨〟のエネルギー輸出にも暗雲が立ち込める。米国は8日、露産原油や石油製品の禁輸を発表。欧州連合(EU)も全体の4割を依存する露産天然ガスからの脱却を進める計画を発表した。

制裁でロシアのGDP(国内総生産)の縮小は今年、数%~十数%に達する可能性がある。

会員限定記事会員サービス詳細