大槌のおもてなし届ける 祖父母犠牲の小国夢夏さん 震災11年

「岩手県大槌町にあるおもてなしの心を伝えたい」と語る小国夢夏さん=11日午前10時13分(松本健吾撮影)
「岩手県大槌町にあるおもてなしの心を伝えたい」と語る小国夢夏さん=11日午前10時13分(松本健吾撮影)

囃子に合わせて虎が踊る「虎舞」は岩手県沿岸部の伝統芸能。11日に大槌町で開かれた県と町の合同追悼式には、鎮魂に舞う白い虎の横で笛を吹く小国夢夏(ゆか)さん(24)の姿があった。小国さんは中学1年のとき、祖父の柏崎恒二(こうじ)さん=当時(75)=、祖母のケイ子さん=同(69)=を津波で失った。

「じいちゃんと2階に上がってるから」「気を付けてね」

地震の後、ケイ子さんと電話してほどなく、避難先の高台から2人の家が津波に飲まれるのを見た。助からないと悟った。数週間後、恒二さんの遺体がみつかった。ケイ子さんは行方不明のままだ。

恒二さんはかつて、遠洋漁業の漁師だった。

「魚の絵を描くのがうまかった。世界地図を指差して『この国はどこでしょう』と遊んだりもした」

おしゃべりだったケイ子さんは、勤め先の水産加工場を辞めてからは茶飲み友達を訪ねる毎日。その後ろをよくついて回った。2人の家は海の目の前にあった。「おじいちゃんとおばあちゃんも、亡くなったというよりどこか遠くに引っ越したような感覚がある」

11年の歳月がたった。震災前に約1万5千人だった町の人口は約1万1千人に減少。被災当時の小国さんの同級生で、町に残る人は2割程度だ。そんな中で小国さんは県内の短大を卒業するとき、「出なくても困らないし、違う街で人との関係を一から作るのも大変」と顔なじみの多い大槌に残る選択をした。現在は町観光交流協会で特産品のネット販売や観光客の案内などに携わる。

観光を通して町と向き合う中で、大槌のあり方を考えることが多くなった。思い出したのは復興に向けた課外活動をしていた高校時代の体験だ。町当局にも意見をぶつけた。「私たちの意見を聞いてくれたのがうれしかった、大人が意見を拾わなければ」。町のこれからに「町にいる人が『これは自分がやった』と思えるようなことをしたい。大槌を気に掛けるきっかけになる」と志を抱く。

「人が世話好きでおもてなしの心がある大槌の魅力を伝えたい」

町の玄関口にきょうも立つ。(内田優作)

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