日本人も志願したウクライナ義勇兵 「ひとごとでない」

ロシアによる侵攻を受け、在日ウクライナ大使館が2月末にツイッターで募集した「外国人義勇兵」。日本人約70人が志願したことが判明したが、日本政府はウクライナ全土に退避勧告を出しているとして自制を促し、その後、在日ウクライナ大使館側が投稿を削除した。騒動は落ち着いたものの、ロシアの攻撃は激しさを増している。義勇兵を志願した福島県の男性が産経新聞の取材に応じ、「困っている人の力になりたかった」と胸の内を語った。

男性は福島県いわき市の自営業、三戸豪士(さんど・ごうし)さん(31)。ウクライナに友人が残っているといい、「ひとごととは思えず志願した」と話す。

地域団体の代表として、地元の若者支援や東日本大震災の復興活動を長年続けてきた三戸さん。姉が自衛官で、自身も格闘技経験がある。「恐怖心がないといえば噓になる。でも困っている誰かのためにという気持ちがあった」といい、今月1日に義勇兵に志願する内容のメールを大使館に送った。だが大使館側から返事はなく、「はがゆい気持ちだ」と明かす。

外務省はウクライナ全土に退避勧告を出しており、大使館もツイッターへの投稿をすでに削除している。義勇兵の道は事実上閉ざされたといえるが、三戸さんのウクライナの人々への思いは変わらない。地元の仲間と協議し、同国からの避難民を旅館で受け入れる準備を進めているといい、別の形でウクライナに貢献したいという。

大使館とは別のルートから戦闘への参加を打診された人もいる。元フランス外国人部隊隊員、野田力(りき)さん(42)にはロシアによる侵攻開始前、海外に住む知人から義勇兵参加を呼びかけるメールが届いた。仏外国人部隊に約6年半所属し、アフガニスタン戦争にも従事したという野田さん。ただ今回は「日本での生活や家族を守りたい」という思いもあり、誘いを断った。

海外メディアによると、ウクライナにはすでに約2万人の外国人義勇兵が集まっている。野田さんは「対テロ戦争だったアフガニスタンと異なり、今回の戦争は国対国。大掛かりな兵器も使われており、アフガニスタンでの体験とは危険度が段違いだ」と語った。

「薩長」による戦闘に原型?

日本からの義勇兵参加をめぐっては、「私戦予備・陰謀罪」に該当するとの指摘もあった。同罪は刑法93条に規定され、外国に対して私的に戦闘行為をする目的で準備や計画をした場合、3月以上5年以下の禁錮刑を科すというものだ。具体的には、戦闘のために兵士や兵器の調達、情報収集などを行えば、同罪に該当するとされる。

ただ、同罪の適用は非常に珍しい。近年では警視庁公安部が令和元年7月、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)への参加目的でシリアに渡航準備をしたとして、当時大学生だった男性らを書類送検した例があるが、いずれも不起訴になっている。

今回の義勇兵は該当するのか。東京都立大法学部の星周一郎教授(刑法)は、大使館の募集に応じた場合でも「罪に抵触する可能性は低い」とみる。ポイントは「私的戦闘」をどう解釈するか。ロシアとウクライナは国の正規軍どうしの戦闘を継続しているとして、「私的な戦闘と言えるかは難しいだろう」との考えだ。

近畿大の辻本典央(のりお)教授(刑法)も同様の見解を示す。私戦予備・陰謀罪について「例えば外国でテロ集団に加わるなど、国と国との関係を悪化させる行為を処罰する法律」と定義した上で、「正規のウクライナ軍に参加する場合は、この罪で処罰されないのが通説だ」とする。

同罪の原型は明治期に定められた旧刑法にある。星教授は江戸時代末期に、薩摩藩や長州藩が外国に戦争を仕掛けたケースを前提にしていたようだと指摘する。

ただ時代は変化している。星教授は、今回の戦争でロシアにハッキングを仕掛けている国際ハッカー集団「アノニマス」の動きを注視。「例えば戦争の終了後も、アノニマスのような団体がハッキング行為を続けた場合は『私的な戦闘』にあたるのか。法律制定当時に、まったく想定されていなかった状況が生まれている」と述べ、新たな法整備の必要性を訴えた。(藤木祥平)

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