日本にもスタグフレーションの脅威 ウクライナ危機

ウクライナ危機を受け、物価高と景気悪化が重なる「スタグフレーション」の影が主要国に迫るなか、資源輸入国の日本を直撃する懸念が出ている。足元の物価上昇率は欧米ほど上昇していないものの、4月以降は日本銀行が政策目標に掲げる2%まで加速する可能性があり、既に食料品などの値上げが相次ぐ。景気後退(リセッション)に陥った平成20年との類似点も指摘され、「物価の番人」である日銀は景気下支えとインフレ抑制で板挟みになりそうだ。

資源に乏しく食料自給率も低い日本は、国際商品市況の価格変動に大きな影響を受ける。とはいえ、デフレ心理が根強く残る中、これまでは資源価格が高騰しても消費者の離反を恐れる企業がその分のコストを負担することで、小売価格の上昇には結びつきにくい傾向が強かった。

実際、企業間の取引価格を示す2月の国内企業物価指数は前年同月比9・3%上昇し、第2次石油危機の影響が残った昭和56年以降で最大の上げ幅だったが、18日に発表される2月の消費者物価指数は0%台半ばの上昇にとどまる見込み。

だが、ウクライナ危機の影響で原油や食料などあらゆるモノの価格が高騰し始めたことで、足元では消費者にも「値上げやむなし」の雰囲気ができつつある。

令和4年度に入ると昨年の携帯電話料金値下げの影響が剥落することもあり、ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎経済調査部長は「4月には物価上昇率が2%まで加速し、年内は高止まりする」と分析。欧米に比べ新型コロナウイルス禍からの回復が遅れた日本は物価上昇に抵抗力が弱く、景気下押し効果が大きいという。

過去にスタグフレーションに陥った平成20年にも、産油国イランとイスラエルの軍事的緊張による地政学的リスクの高まりで米国産標準油種(WTI)が7月に1バレル=147・27ドルの最高値を記録し、サブプライム問題の表面化も重なって景気は深刻に悪化。日銀は当時、機動的な対応が取れなかったと批判を受けた。

今の日銀も金融政策を据え置けば米国との金利差拡大で円安が輸入物価高を加速させ、引き締めに転じれば景気を冷やす難しい立ち位置だ。17、18日の金融政策決定会合では政策を修正しない見通しだが、スタグフレーションが明確になれば苦渋の判断を迫られる。(田辺裕晶)

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