長崎・五島の潮流発電実験で安定性能確認 普及に弾み

発電機を海底に設置する作業船=令和3年1月、長崎県五島市(九電みらいエナジー提供)
発電機を海底に設置する作業船=令和3年1月、長崎県五島市(九電みらいエナジー提供)

潮の満ち引きによる海流を利用して発電する「潮流発電」の普及に弾みがつきそうだ。九州電力の子会社、九電みらいエナジー(福岡市)が昨年1月から進めている大型発電機を使った実証実験で、気象条件にかかわらず安定して発電できる性能が確かめられ、商業運転に必要な国の認定を得た。日本は西日本の海峡部など適地が豊富で、再生可能エネルギー普及に向けた新たな選択肢として注目される。

実証実験は長崎県五島市の離島、奈留島と久賀島にはさまれた奈留瀬戸の水深約40メートルの海底に水車を設置して実施された。

潮流発電の特色は、出力の規則性だ。天候に左右されがちな太陽光や風力といった再エネと異なり、一定のリズムが保たれる潮の満ち引きを利用するため予測が可能だ。今回の実験でもカナダなど海外の先行事例を踏まえて算出した発電量やサイクルから大きくぶれることなく発電できた。

海底で潮流を受け発電する水車(九電みらいエナジー提供)
海底で潮流を受け発電する水車(九電みらいエナジー提供)

実験では、干潮時の海流のみを用いたが、水車の向きを変えることで、満潮時も発電できるようになる。この場合、およそ5~6時間ごとに発電量がピークに達するサイクルとなる。

特筆すべきは、昨年3月の「爆弾低気圧」や、同9月の台風14号といった厳しい気象条件下でも予想通りに発電できたことだ。陸上や海上が大荒れでも安定して稼働できることが裏付けられた。

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実験で前進したことは他にもあった。

潮流発電は、他の発電方法と異なり、国内での実績に乏しいため、そもそも建設時の許認可など稼働前に必要な手続きが明確でなかった。今回の実験ではこの点についても関係官庁と調整を重ね、今後の整備への礎を築くことができた。

また、海底への発電機の設置は、周辺環境や船舶の航行などに支障を与えないことが大前提だ。地元、奈留町漁業協同組合の大久保金政組合長は「当初は一部で不安視する声があった」と打ち明ける。

ただ、実験中に大きなトラブルはなく、発電機周辺に多くの魚が集まっていたことも確認されたという。漁業関係者の間では、費用がかさむ製氷のための電力を、潮流発電で賄う構想も浮上している。大久保氏は「地元の豊かな海で獲れた魚だけでなく、鮮度を保つための氷まで含めた『地産地消』として付加価値向上が図れる」と期待する。

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一方、普及に向けた課題はコストだ。現状では潮流発電の発電コストは1キロワット時あたり100円超で、太陽光や洋上風力などの他の再エネについて、資源エネルギー庁が一定条件の下で試算した同10~30円(令和2年)比べ、桁違いだ。

コストがかさむ要因はさまざまある。例えば水車などの設備の設置には正確な位置情報の把握が可能な特殊な作業船が必要だ。今回は海外からチャーターし、多額の費用がかかった。日本は海上油田開発などで経験、実績を重ねた海外勢に比べると技術面で遅れをとる。ただ、国は洋上風力発電所の開発を加速させる方針で、海上工事のニーズは高まることが見込まれる。既存クレーン船などで対応可能なノウハウが確立されればコスト削減効果が期待できる。

水車そのものも導入拡大が進めば量産効果によるコスト減が見込める。今回の実験を委託した環境省はコスト削減に向けた検討を加速させる。

令和4年度当初予算には関連費用として6億5000万円を計上している。加えて、現状では対象外の再エネ固定価格買い取り制度(FIT)の適用などで投資を促進する施策も必要になってくる。(中村雅和)

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