カニの甲羅に墨を入れた南方熊楠、標本初公開

南方熊楠が墨を入れたとみられるヘイケガニの標本=和歌山県白浜町の南方熊楠記念館
南方熊楠が墨を入れたとみられるヘイケガニの標本=和歌山県白浜町の南方熊楠記念館

和歌山県出身の世界的な博物学者、南方熊楠(みなかたくまぐす)(1867~1941年)が保管していたカニやヤドカリの標本43種63点が、同県白浜町の南方熊楠記念館で初公開されている。大学予備門(現・東京大学)時代に集めたものが多いとみられるが、初めて種類を特定して展示。熊楠自身が甲羅に墨を入れたとみられる標本もあり、三村宜敬(のぶたか)学芸員は「カニは形態がユニークなため、興味があったのではないか」と推測している。

ホソウデヒシガニの標本=和歌山県白浜町の南方熊楠記念館
ホソウデヒシガニの標本=和歌山県白浜町の南方熊楠記念館

同県田辺市にあった熊楠の自宅のたんすに保管されていた標本で、記念館で収蔵していたが、長い間、整理されずにいた。在野の研究者に種類特定を依頼し、特別展で展示することになった。

標本はヤドカリが1点あるが、ほかはすべてカニで、大きさは1~2センチから10センチほど。まんじゅうのような形のスベスベマンジュウガニや長い腕があるように見えるホソウデヒシガニ、ビワのような形のビワガニ、イボイワオウギガニなどが集められている。ヘイケガニには、甲羅に顔のようにも見える墨が入れられており、熊楠が描いたとみられるという。

イボイワオウギガニの標本=和歌山県白浜町の南方熊楠記念館
イボイワオウギガニの標本=和歌山県白浜町の南方熊楠記念館

三村学芸員によると、上京して入学した大学予備門時代の明治18年に、神奈川県藤沢市の江の島に出かけた紀行文が残されており、保管されていたカニの一部が記されている。また保管標本には江の島がある相模湾に多いカニも含まれていることから、大学予備門時代、江の島で標本を購入するなどして入手した可能性が高いという。

 南方熊楠(南方熊楠記念館提供)
南方熊楠(南方熊楠記念館提供)

熊楠はネコや人物のほか、カニを描いた絵を残している。博物学は生物も対象で、三村学芸員は「カニの形や種類を確かめたかったのではないか。コレクションしたいという気持ちもあったかもしれない」と話している。

熊楠が江の島の紀行文を書いたのは明治18年で、17歳のとき。翌19年には大学予備門を中退して渡米し、十数年に及ぶ海外生活を送ることになった。英国にもわたり、科学雑誌「ネイチャー」に論文を発表するなどし、33年に帰国した。

標本の特別展は4月10日まで。木曜休館。問い合わせは記念館(0739・42・2872)へ。(張英壽)

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