デジタルドル 中国の挑戦を封じて覇権維持

バイデン米大統領=8日、ホワイトハウス(ゲッティ=共同)
バイデン米大統領=8日、ホワイトハウス(ゲッティ=共同)

バイデン米政権が中央銀行デジタル通貨(CBDC)「デジタルドル」の研究開発に乗り出す。その背景には、中国が「デジタル人民元」開発で先行する状況を巻き返し、ドルによる覇権を維持する狙いがある。世界中でデジタル人民元による決済ができるようになれば、中国は米国主導の国際決済網からの脱却が可能で、ウクライナ侵攻を理由に排除されつつあるロシアとも手を結べる。こうした事態を避けるため、米国は開発の検討を急ぐとみられる。

米連邦準備制度理事会(FRB)のCBDCに対する姿勢は慎重とされてきた。1月にまとめた報告書でもデジタルドル発行について賛否を明らかにしなかった。

だが、今回のバイデン大統領による大統領令署名で、政府を挙げての積極姿勢にかじを切るったことになる。念頭にあるのは、中国によるデジタル人民元の試験運用の加速だ。中国には既存の国際決済システムへ挑戦する意図があるとの見方が多い。

現在、国際的な決済の約4割がドルで行われているとされる。中国が他国へ輸出し人民元で代金を受け取るさいも、その国の通貨がまずドルと交換され、そのドルがさらに人民元へと交換される形が多い。

こうした決済の大半で介さなければならないのが、米国の影響力が強い国際決済ネットワーク「国際銀行間通信協会(SWIFT)」。米国はSWIFTからの排除を〝敵対国〟への制裁の武器に使ってきた。

だが、ブロックチェーン技術を使うデジタル人民元が通用するようになれば、SWIFTを介する必要はなくなり、米国の影響力は弱まる。中国がデジタル通貨でロシアなどと協力するようになれば、米国にとり安全保障上の脅威となる。

CBDCは欧州中央銀行(ECB)も発行の準備を進めている。米国の〝参入〟で、本格的な開発競争の時代が到来しそうだ。(山口暢彦)

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