企業物価上昇も進まぬ価格転嫁 飲食など悲鳴

東京都中央区の日本銀行本店(川口良介撮影)
東京都中央区の日本銀行本店(川口良介撮影)

日銀が10日発表した2月の国内企業物価指数は前年同月比で9・3%上昇し、過去最大の上げ幅となった。企業間で取引される物品の値動きを示す同指数は、昨年春ごろから上昇傾向が続く。一方で消費者が買う商品やサービスの値動きを示す消費者物価指数の上昇率は1%にも満たない状況だ。幅広い商品の値上げが相次いでいるが、原材料価格の高騰が、消費の現場まで十分に価格転嫁されていない実態がうかがえる。

「値上げをお願いしたいのは本音だが、客離れが心配で踏み切れない」。ある大手外食チェーンの担当者はそう話す。

穀物やエネルギー価格の上昇を受け、あらゆるモノの値段が高騰し始めているが、飲食店の値上げ発表は、マクドナルドや牛丼チェーンなどファストフードを中心に一部にとどまる。

外食業界はもともと競争が激しい上に、新型コロナウイルスの影響で需要が低迷。値上げをすれば顧客離れを加速させる懸念もあり「ライバルが値上げしないか横にらみの状況」(関係者)なのだという。居酒屋「甘太郎」などを展開するコロワイドや、ファミリーレストラン「ガスト」などを運営するすかいらーくホールディングスも値上げ発表はしておらず、「製造効率を高めることで商品価格を上げない努力をしている」(同社)状況だ。

帝国データバンクが全国の企業を対象に1月末に価格転嫁の実態を調査したところ、原材料高騰の影響があると回答した企業の47%が「価格転嫁は全くできていない」と回答した。特に飲食店ではこの割合が64%にも及ぶ。

加工食品などもメーカーの値上げ発表が相次ぐが、小売りの現場にすぐに反映されるわけではない。あるスーパーマーケットの関係者は「メーカーの言う通り値上げなんかできない。100円で仕入れたものを99円で売ることもある。それが客商売だ」と話す。

大和証券の末広徹シニアエコノミストは「賃金が上がらない中で、消費者向けの製品やサービスの価格は特に上げにくい」と指摘する。ただ、価格転嫁が進まず企業業績が悪化すれば賃上げはさらに遠のき、経済は悪循環に陥る。末広氏は「価格転嫁しても消費が落ち込まないような、更なる家計支援策や賃上げ促進策が必要だ」と話している。(蕎麦谷里志)

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