韓国の第20代大統領になる尹錫悦氏は、ソウルで大学教授の両親の元に生まれた。名門ソウル大学法学部に入学した1979年は、全斗煥(チョン・ドゥファン)元大統領がクーデターで実権を握り、民主化を弾圧した政治の激動期だった。尹氏は民主化運動には参加しなかったが、法学部の同好会で模擬裁判を企画。裁判長を任され、全元大統領に「無期懲役」の判決を出したことで、軍部に危険人物と目され親戚宅にしばらく避難したという。
もともとは教授を目指していたが、司法試験に合格もせず学生を教えることに疑問を感じ、同試験の受験を決意した。しかし浪人中も酒席好きで付き合いが良く、91年に9度目で合格した。
特捜部で頭角を現し、保守、革新を問わず政治家の家族らの不正を捜査。2016年の朴槿恵(パク・クネ)前大統領の友人の国政介入事件捜査を手がけ、文在寅(ムン・ジェイン)政権で検事総長に抜擢(ばってき)されると、曺国(チョ・グク)元法相の家族の大学入試不正疑惑を捜査した。
キャッチフレーズは「国民が育てた尹錫悦」。公式SNSでは愛犬や愛猫とたわむれる様子や「ソンヨル兄の飯屋」と題する広報動画で手料理を振る舞い、有権者と語り合う気さくな一面もアピールした。(石川有紀)