「人道回廊」成功は一部 ロシア軍、産科病院を爆撃 初の外相会談も停戦望み薄

7日、ウクライナ南部のオデッサからバスで避難する姉妹。窓越しの母親に別れを告げた(ロイター)
7日、ウクライナ南部のオデッサからバスで避難する姉妹。窓越しの母親に別れを告げた(ロイター)

ロシアによるウクライナ侵攻で、戦闘が続くウクライナ各地の都市に9日、民間人を退避させる「人道回廊」が設置されたが、ロシア軍の妨害があり、退避に成功したのは一部にとどまった。回廊が設置された東部マリウポリでは露軍が産科・小児科病院を爆撃。17人が負傷した。10日には侵攻後初となる両国の外相会談がトルコで予定されているが、停戦に向けた前進があるかは不透明だ。

人道回廊は9日、首都キエフの周辺都市からキエフに向かう5ルートのほか、北東部スムイ、東部イジューム、東部ボルノバーハ、東部マリウポリ、南部エネルゴダルから内陸に向かう計10ルートが設置された。

ウクライナメディアによると、スムイからは4万人以上、エネルゴダルからも1千人以上が退避した。ただ、キエフ周辺のルートでは3ルートがロシア軍の妨害に合い、退避できたのは約3千人にとどまった。

ウクライナの政権与党幹部のアラハミヤ氏は同日、自身のフェイスブックで「4万人以上が退避した。10万人を目指したが、失敗した」と表明した。

回廊が設置されたマリウポリでは、ロシア軍が産科・小児病院を爆撃し、職員や女性ら17人が負傷した。死者は確認されていない。ウクライナのゼレンスキー大統領は「残虐行為だ!」と非難。ロイター通信などによると、米ホワイトハウスや国連もロシアを批判した。一方、露外務省は「ウクライナ軍は病院を武装させていた」と一方的に主張した。マリウポリ当局は9日、同市を包囲するロシア軍の攻撃でこれまでに民間人約1300人が死亡したと発表した。

10日にはトルコ南部アンタルヤでウクライナのクレバ外相とラブロフ露外相の会談が行われる。侵攻後、両国閣僚の会談は初。ただロシアは、停戦にはウクライナの「非軍事化」やクリミア半島へのロシアの主権の承認が必要だと主張し、譲歩には応じない構えだ。ウクライナメディアによると、会談に先立ち、クレバ氏は「会談に期待するのは控えている」と表明。交渉は難航が予想されている。

会員限定記事会員サービス詳細