ロシアによるウクライナ侵攻で、核保有国が同盟国と核兵器を共有して抑止力を高める「核共有(ニュークリア・シェアリング)」の議論を求める声が国内でも上がる。政府は非核三原則を理由に検討そのものを否定するが、ウクライナ危機が核抑止の現状を突きつけたのも事実で、専門家は安全保障の現実に目を向ける意義を訴える。
NATOでの核共有は、冷戦期に旧ソ連の脅威に対抗する目的で導入。ストックホルム国際平和研究所によると、米国保有の核兵器がベルギー、ドイツ、イタリア、オランダ、トルコに約100発配備されており、有事の際は、配備国の軍用機で攻撃する流れだ。
「旧ソ連軍が欧州に侵攻した際、通常兵器で食い止められないときに核で劣勢をひっくり返す狙いがある」と解説するのは日本大危機管理学部の小谷賢教授(国際政治学)。ただ使用には、米国と配備国側双方の決断が必要で小谷氏は「米国独断での運用となれば、配備国が米国の核戦争に巻き込まれる恐れがあるためだ」と話す。