ロシアによるウクライナ侵攻で、ポーランド外務省は8日、同国が保有する旧ソ連時代の戦闘機「ミグ29」全機の扱いを米国に委ねる用意があると表明した。同機は米国を通じてウクライナに供与される可能性があり、実現すればウクライナ空軍は防空力を向上できる。ただ、ロシアの反発は確実で、米国は慎重に判断するとみられる。一方、ウクライナ東部スムイでは8日、民間人を退避させる「人道回廊」が設置され、同国メディアによると、約5000人が退避した。
ウクライナのゼレンスキー大統領は、露軍の空爆を防ぐため、北大西洋条約機構(NATO)にウクライナ上空を飛行禁止区域に設定するか、戦闘機を供与するよう要求。米国はこれを受け、ウクライナ空軍と同じ旧ソ連時代の戦闘機を運用する東欧諸国と戦闘機供与の可能性を調整してきた。ただ、ポーランドはこれまで戦闘機の供与を否定していた。
ポーランド外務省は声明で、保有するミグ29全機をドイツ西部のラムシュタイン米空軍基地に即座に移動させ、米国が自由に使用できるようにする-と表明。同時に、ポーランドの防空能力を維持するため、代替となる戦闘機を供与するよう米国に求めた。声明はさらに「ミグ29を運用するNATO諸国が同様の措置を取るよう求める」とした。
米メディアによると、米国はミグ29の代替として米戦闘機F16を提供することを検討している。
ただ、露国防省は6日、ポーランドなどがウクライナに空軍基地を使用させた場合、「対露参戦したものとみなす」と警告するなど、ロシアはNATOによるウクライナへの軍事支援を非難してきた。ポーランドの決定にロシアが反発するのは確実で、米欧との緊張が高まるのは必至だ。
ウクライナではスムイに「人道回廊」が設置され、民間人約5000人が南方のポルタワに退避した。人道回廊による多数の民間人の避難は初。ただ、首都キエフや北東のチェルニヒウ、東部ハリコフ、東部マリウポリなどでの回廊設置をめぐっては、ロシアが退避先の大半をロシアやベラルーシに一方的に設定。ウクライナは反発しており、今後これらの都市でも避難が進むかは不透明だ。